【佐賀店】 追悼ブラッドベリ『華氏451度』
耳にはめたラジオから絶えず流れる無意味で耳触りのいい音声、大画面のテレビに映し出される刺激的で夢中になれる映像、ただ与えられた情報だけを受け入れ、自ら考えることのなくなった世界。
焚書官モンターグの仕事は、隠し持っている本を家ごと焼き払ってしまうこと。
与えられた仕事になんの疑問も持たなかったモンターグは、ある日隣に住む変わりものと呼ばれる少女クラリスに出会う。
自分で考える機会を一切奪われた社会、それに慣れ切って余計な思考をする事を罪悪のように厭う人々。
本が禁じられた世界が重要なモチーフになっていますが、本を読むという行為は自ら考えること、学ぼうとすること、そして自由の象徴として書かれています。
モンターグが世界から追われる身となった時に、彼は放浪する知識人達と邂逅します。
たき火に照らされた老人達がお互いを「こちらはショーペンハウアー」「あっちがアインシュタイン」と紹介し合う。
たとえ本が失われても、こうして本を暗記している人間がいればその心を受け継げる。
どんなに鋳型にはめようとしても、こうして人々は精一杯の抵抗をして生きていきます。
彼らの心には、命の火、使命の火が灯っています。その瞳はなんと美しいことでしょうか。
抵抗はただ従わないというだけではなく、自分の頭で考えるということ。生きていくために抵抗する勇気を持つということ。
心の自由を持つことを考える、永遠の物語です。
(佐賀店 Y.M)




