紀伊國屋書店新宿本店3階の月がわりブックフェア「じんぶんや」、今月の選者は三浦展さん。「これからの都市、郊外、消費社会と人間を考えるための30冊」というテーマで、じんぶんやにエッセイをいただきました。
三浦展さんエッセイ「これからの都市、郊外、消費社会と人間を考えるための30冊」

私は都市や芸術に関わる仕事がしたくて1982年にパルコに入社した。しかし配属されたのはマーケティング雑誌の編集部であり、そこでの最初の仕事が埼玉県所沢市に出店する新しいパルコのためのエリアマーケティングであった。私の仕事は最初から郊外を考えることだったのだ。パルコではその後、単なるマーケティングを越えて、郊外の文化論を研究しろと言われた。郊外の文化論? 何、それ?と思ったが、自分が高校時代以来考えてきた戦後日本の中流階級の欲望の肥大化という問題、パルコに入ってから課題となった団塊世代の研究、中流とも団塊とも関わるアメリカ文化の影響、こうしたさまざまな問題を郊外の文化論を考えることによって統合できると気づいた。そう思うとわくわくした(このへんの経緯は『郊外はこれからどうなる?』に書いた)。
結局私にとって郊外はライフワークとなり、パルコを辞めてからも郊外を研究し続け、その「中間報告」を『「家族」と「幸福」の戦後史』としてまとめた。しかし残念なのは、私の関心が郊外の起源を求めて、1930年代から50年代のアメリカに向かってしまったことである。そのため、日本の戦前の郊外や住宅についての研究がおろそかになった。もしそれらについても並行して研究していれば、すべての同潤会アパート、普通住宅、分譲住宅を1980年代末の時点で見ていたはずだ。パルコ入社当時に代官山アパートを見たときの衝撃は忘れない。まるで夢を見ているような気持ちになった。それなのになぜ同潤会をもっと見て歩かなかったのか。本当に残念である。だから、私が2000年頃から出してきた数冊の東京散歩本、また今回の『東京高級住宅地探訪』に共通しているのは同潤会のある街を訪ねているのである。今年5月に上野下アパートが解体予定だが、これですべての同潤会アパートがなくなる。『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』で研究した、阿佐ヶ谷住宅もいよいよ年内に跡形もなくなるようだ。まったく淋しい限りである。
東京の歴史は破壊と創造の歴史である。悪く言えばスクラップ・アンド・ビルドの歴史であり、言い換えれば、都市自体が消費される、いや浪費される歴史であった。文明開化、関東大震災、戦災、東京オリンピックと高度経済成長、そしてバブル、近年は規制緩和によって、たしかに東京駅、丸ビル、デパート、ホテル、競技場など、さまざまな近代的な施設がつくられてきた。しかし一方で、江戸の情緒、昭和の記憶、職人の暮らしぶりなどがことごとく失われて来たのである。近代化の暴力的な破壊への不信は私には強くあるし、またそうしたことを論じた本を好んで読んできた。
しかし面白いもので、この10年は、つまり『第四の消費』の時代になってからは、人々の価値観が変わってきた。新しいものよりも古いものを好み、近代建築よりも路地や地形の複雑さを好み、大量生産品よりも手仕事を好む人々が、むしろ若い世代に増えてきたのである。これからは都市も郊外も消費も生活も、今までとは違ったベクトルで変化していくだろう。そこに私の希望がある。
三浦展(みうら・あつし)さんプロフィールカルチャースタディーズ研究所主宰/消費社会研究家、マーケティング・アナリスト。
1958年、新潟県生まれ。一橋大学社会学部卒業。1986年、パルコのマーケティング雑誌『アクロス』編集長、1990年、三菱総研を経て、1999年、カルチャースタディーズ研究所設立。著書に『下流社会』『東京は郊外から消えていく!』(光文社新書)、『「家族」と「幸福」の戦後史』(講談社現代新書)、『ファスト風土化する日本』『大人のための東京散歩案内』(洋泉社)『スカイツリー東京下町散歩』『第四の消費』(朝日新書)、『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』(NHK出版)、『奇跡の団地 阿佐ヶ谷住宅』(王国社)、『中央線がなかったら』(NTT出版)など多数。
東京高級住宅地探訪
三浦展 / 晶文社
2012/11出版
ISBN : 9784794967879
¥1,890 (税込)
よき住まいとはいかなるものか?戦前に開発された東京西郊の住宅地を案内。
近代・中流・家族の歴史に思いをはせる。(Bookweb書誌より)
三浦展さん選書・コメント
三浦展さんコメント 田園調布、成城学園、洗足、桜新町、常盤台など、明治末期から大正、昭和初期に開発された東京の著名な住宅地の歴史を知ることのできるバイブル。図版、写真も往時を偲ばせるものが多く、愛蔵したくなる本だ。
近代日本の郊外住宅地
片木篤、藤谷陽悦 / 鹿島出版会
2000/03出版
ISBN : 9784306072268
¥8,820 (税込)
三浦展さんコメント 関西の研究者による本なので、東京以上に京阪神の住宅地に力点が置かれ、かつ全国の住宅地を網羅している。東京圏では田園調布、成城はもちろん、等々力、大船など。京阪神では御影、六麓荘をはじめ、北白川、香里園、箕面、千里山などを取り上げている。巻末の郊外住宅地開発年表の資料性がすばらしい。
大東京案内
今和次郎 / 筑摩書房
2001/10出版
ISBN : 9784480086716
¥1,155 (税込)
三浦展さんコメント 現代を分析し、将来を予測するときに、私はしばしば古本を読む。特に大正から昭和初期の東京について書かれた本を読むと、その状況は現代とあまり変わらない。破壊と建設を繰り返しながら、各地に個性ある街を生み出してきた東京の原像を知りたいなら本書を読むにしくはない。
大東京案内
今和次郎 / 筑摩書房
2001/11出版
ISBN : 9784480086723
¥1,260 (税込)
三浦展さんコメント (『大東京案内 上 新版』と同コメント)
墨東綺譚
永井荷風 / 岩波書店
1991/07出版
ISBN : 9784003104156
¥525 (税込)
三浦展さんコメント 私はほとんど小説を読まぬが、川本三郎の評論をきっかけに「?東綺譚」を読んだら、まさに陶酔してしまった。関東大震災によって江戸の街並みが消えたことを嘆く荷風は、江戸の残り香を探し求めるように東京の街、特に浅草や玉の井などを歩き回った。その徘徊の結果として生まれた最高傑作が「?東綺譚」である。一見つまらぬ男と女の出会いを通じて、近代が喪失させたものへの愛惜が、透明なのに感情豊かな文体で描かれている。
東京の下層社会
紀田順一郎 / 筑摩書房
2000/03出版
ISBN : 9784480085450
¥998 (税込)
三浦展さんコメント 100年ほど前の労働者階級の姿を描く。本物の下層社会とはこういうものなのかと、思い知らされる。彼らが暮らすのは、東京の川沿いの低い土地、湿地帯である。たとえば、いま深川というと、高層マンションや商業娯楽施設が建ち並んだ綺麗な街だと思うだろうが、それはせいぜいここ30年の話。もとは工場地帯、その前は、ちょっと雨が降ると家が浸水するようなところだった。若い人も、そういう都市の近代史を社会常識として知るべきだと思う。
排除の現象学
赤坂憲雄 / 筑摩書房
1995/07出版
ISBN : 9784480081988
¥1,260 (税込)
三浦展さんコメント 郊外が社会学的な研究の対象になることを私に教えた本として『東京漂流』と並ぶ一冊。鳩山ニュータウンなどの郊外に対する違和感をもった叙述が新鮮であった。しかし現在の鳩山ニュータウンを訪ねると、排除的な雰囲気はあまり感じられず、情熱的に計画された田園郊外がそこにあることを実感する。街の分析は一時点だけでなく、長期的、継続的に行われなければならない。
三浦展さんコメント 近年、自身が東京郊外で育った人々による郊外研究が増えてきた。本書は、そのなかのもっとも興味深いものだ。私が郊外研究の対象としてきたのは、原点がパルコだったため、東京の西南部の、一戸建ての持ち家に住むような比較的裕福な人たちだった。一方、本書が扱っているのは、私があえて見逃してきた西北部や東部の人たちで、団地や借家住まいの人たちだ。私の郊外研究と併せ読んでいただければ情報が補完しあえるだろう。
三浦展さんコメント 私がこの本を初めて原書で読んだのは2003年だが、その序文がすばらしい。非常に社会学的な論文。建築、都市計画の専門ではない人はこの序文だけでも読もう。この本の原題は『TheNextAmericanMetropolis』。だから序文では「NextAmericanDream」を考えている。ネクストと言うからには、もともとの古いアメリカンドリームがあるわけだが、それがまさに、先述した郊外の庭つき一戸建て住宅に住む核家族だった。それは働く男性と専業主婦の妻を中心とする家庭である。そういう生活を実現することが、アメリカンドリームだったからだ。
しかしその後家族は多様化し、複雑になった。女性も働くようになり、離婚も増え、さまざまな家族の形態、ライフスタイルが生まれた。それならば、これまでとは違うまちづくりが必要だというのがカルソープの主張である。
宗教社会学論選
マックス・ヴェ−バ−、大塚久雄 / みすず書房
1988/07出版
ISBN : 9784622005568
¥2,940 (税込)
三浦展さんコメント できれば死ぬまでに、この本の「中間考察」を翻訳したい。あくまで趣味でいい。とても出版するほどの翻訳をする能力はない。大塚久雄の紹介によって、しばしば近代主義者であるかのように誤解されるウェーバーだが、実は近代の持つ矛盾に対してきわめて自覚的であった。近代とは、人間のもっと自由な感性を抑圧し、精神を引き裂くものであるという認識がウェーバーにあったことが「中間考察」を読むとわかる。
フロイト著作集
ジ−クムント・フロイト、井村恒郎 / 人文書院
1969/12出版
ISBN : 9784409310038
¥5,775 (税込)
三浦展さんコメント フロイトの中でもっとも面白いのは「性欲論」よりもこの「文化・芸術論」だと思う。人間の心理の奥底にある泥をすくい出して、これでもかこれでもかと解釈する、恐ろしい、そして血湧き肉躍る禁断の思想こそがフロイトの真骨頂である。フロイトはゲーテ賞を受賞するほどの名文家。翻訳は高橋義孝をはじめとする名だたる翻訳家たち。特に高橋の訳した「不気味なもの」では、フロイト理論の重要な概念である「抑圧」の意味が手っ取り早くわかる。また「不気味なもの」を援用した論文を私は上野千鶴子編『脱アイデンティティ』に書いたが、それは『第四の消費』でも再掲されている。
思想のドラマトゥルギ−
林達夫、久野収 / 平凡社
1993/06出版
ISBN : 9784582760026
¥1,509 (税込)
三浦展さんコメント 私は学生時代、孤独に勉強していると、しばしば自分には学問は向いていないと疲れ、勉強が嫌になった。そんなときに本書を読むと、なんて勉強って面白いんだろう! また勉強しよう!と思った。知識よりも体験が重要だという意見もあるが、知識がなければ、なにを見ていいのかもわからないということもある。林達夫は特にイタリアルネッサンスの研究家だが、七十歳をすぎるまでイタリアに行ったことはなかった。それでも徹底して資料を渉猟し、まるで15世紀のフィレンツェの街を歩いているかのような文章を書いたのだ。
人間・この劇的なるもの
福田恒存 / 新潮社
2008/01出版
ISBN : 9784101216027
¥420 (税込)
三浦展さんコメント 私が学生だったころ、福田恆存は保守反動の論客と言われており、私は彼の主張を打ち破ってやろうと思い、その著書を読んだが、まったく反論できなかった悔しい思い出がある。合気道の名人に関節技を決められて身動きできないような気分だった。
福田は、日本の知識人が一様に進歩的、革新的な方向に流れがちだった戦後という時代にあって、まったく時流におもねず、ブレることなく、人間とはなにかという本質論を踏まえた政治論、平和論を展開した。どんな時代にも変わらないものとは何かを学ぶには格好の書物。
デパ−トを発明した夫婦
鹿島茂 / 講談社
1991/11出版
ISBN : 9784061490765
¥798 (税込)
三浦展さんコメント 私は20年以上前、消費社会の比較文明史を書いてみたいと思っていた。今でも思っているのだが、どうやら実現は難しいので、20世紀以降の日本とアメリカだけに絞ろうと方針転換したのが14年前。その中でも、ごくごく一部分だけを書くしかあるまいと思っている。19世紀のフランスの消費社会を誰かが書くとしたら鹿島しかいない。本書だけでも、めくるめく消費社会の誕生がいきいきと描き出されている。
三浦展さんコメント 19世紀、ヴィクトリア朝のイギリスにおける労働者の生活水準の上昇とそれに伴う消費社会化については本書が手軽だ。消費生活とはいえ、怪しげな物質を入れて色を染めた紅茶が出回る様などは、いかにもエンゲルスが描いた時代のイギリスだと思わせる。
三浦展さんコメント 今の若い人にしてみれば、戦後の高度成長期だって遠い昔。そういう時代をもっと正確に知っておく必要があると思ったら、本書を読むのが一番手っ取り早い。高度成長期とは、通例1955年から第一次オイルショックのあった73年までを指す。55年には日本生産性本部、経済企画庁、日本住宅公団が設立。翌56年には日本道路公団も設立されるなど現在まで続く日本の体制が形作られた。都市部に集中する工場などで働く労働力需要を満たすために、地方から中卒、高卒の大量の若者が大都市圏に集められた。この大量の人口が高度成長の原動力になったと吉川は言う。
三浦展さんコメント 見田宗介の社会意識論が具体的な現実を取り上げたのが『まなざしの地獄』だ。1969年に起きたピストルによる連続射殺事件の犯人であった19歳の少年・永山則夫(すでに死刑執行済み)の意識を分析したものであり、永山を当時大量に存在した地方から都市へと出郷した中卒の労働者のひとりとしてとらえ、その心理の内面にまで迫った力作である。当時社会学を学んでいた学生にとってはバイブルのような作品。今日問題になっている格差論の古典としても読める。
東京漂流
藤原新也 / 朝日新聞出版
2003/09出版
ISBN : 9784022643186
¥1,260 (税込)
三浦展さんコメント 『東京漂流』が出てすぐ、私の上司は私に「三浦っ! これがマーケティングだっ!」と唸るように言った。彼は自分がやろうとしてできないことを藤原さんが見事にやってしまったと悔しがっているように見えた。私は早速『東京漂流』を読んだ。会社から深夜に帰り、読み始めると興奮して寝られなかった。私もまた自分が学生時代に漠然と思い描いていた現代社会論を藤原さんにやられてしまったと思ったのだ、と今思う。それは現代人の欲望が向かう先への批判である。
モラトリアム人間の時代
小此木啓吾 / 中央公論新社
2010/04出版
ISBN : 9784122053113
¥860 (税込)
三浦展さんコメント モラトリアム人間の特徴は以下の通りである。「まだいかなる職業役割も獲得していない。すべての社会的かかわりを暫定的・一時的なものとみなしている。本当の自分はこれから先の未来に実現されるはずで、現在の自分は仮の者にすぎないと考えている。すべての価値観、思想から自由で、どのような自己選択もこれから先に延期されている。したがって、すべての社会的出来事に当事者意識をもたず、お客さま意識しかもとうとしない。」驚くほど最新の若者論と変わらない。本質的なことはすべて語られている。
三浦展さんコメント 1984年に出されたこの本以前に、本格的な消費社会論というものは日本には存在しなかったと言える。それ以前には、左翼陣営からの一面的な消費社会批判か、消費を喚起する側の広告業界による消費論しかなかったからである。そうした中で、本書は近代的自我を「生産する自我」として批判的にとらえ、非常に具体的な広告やヒット商品の事例や統計データを傍証として駆使しながら、消費社会の限界と可能性を論じ、「高度消費社会」と呼ばれる80年代の爛熟の果てに人間が向かう先を見極めた。
三浦展さんコメント 面白い! ひたすら面白い都市の分析。細部にこそ都市の魅力があることが、豊富な図版とキャッチーな見出しで手に取るようにわかる。そしてまた本書は細部を塗りつぶしてしまう巨大都市開発への批判でもある。本書を読んだら、とりあえずダイニングテーブルの椅子を、同じ椅子でそろえるのではなく、形も大きさも素材も違うバラバラな椅子に替えたくなるだろう。
人間のための街路
バ−ナ−ド・ルドフスキ−、平良敬一 / 鹿島出版会
1978/04出版
ISBN : 9784306070899
¥3,990 (税込)
三浦展さんコメント 自動車優先の道路にも脇には歩道がある。しかしそこを好んで歩く人はいないだろう。人間は本能的に狭い道、曲がった道、でもちょっと明るかったり、休みたくなる場所があったりする道を選ぶ。それは道路ではなく街路である。東京でも都心部はどんどん路地や街路がなくなり、巨大なビルに再開発されている。ショッピングモールの中の偽街路は、30分歩いたら飽き飽きする。人間は二足歩行をして人間になったのだから、歩くことを楽しめる都市は人間の脳を楽しく刺激するはずだ。
アメリカ大都市の死と生
ジェ−ン・ジェイコブズ、山形浩生 / 鹿島出版会
2010/04出版
ISBN : 9784306072749
¥3,465 (税込)
三浦展さんコメント 女子的感覚を思想にした人の最初の一人がジェイコブスではないか。彼女の都市論は一種の「素人の乱」だった。男性的な、マッチョな都市計画は、巨大なビルを建て、何車線もある道路をどんどんつくり、ちまちました建築、ごちゃごちゃした街をブルドーザーでつぶしていく。でも、そのちまちま、ごちゃごちゃが、面白くない? 楽しくない? というのがジェイコブスの主張だった。それはまさに女子的な主張、素人の皮膚感覚、日常感覚だったと言える。
女子の古本屋
岡崎武志 / 筑摩書房
2011/06出版
ISBN : 9784480428370
¥882 (税込)
三浦展さんコメント ちまちま、ごちゃごちゃした日常の些事を愛する女子の論理が、まちづくりにも店づくりにも、社会デザインにも必要とされていると私は考えている。そんなことを確信させた本が「女子の古本屋」である。女子の古本屋とは、ひとことで言えば、これまで男性社会だった古本屋で「女子ども」の本としてまったく軽視されていた、古い主婦雑誌、編み物や料理などの実用書、絵本、児童書などを、カワイイ、味があるという感覚ですくい上げた古本屋である。そういう店がいまどんどん増えている。
三浦展さんコメント 広井のコミュニティ論は都市論であると同時に福祉論である。現代の都市は、高齢者や子どもが楽しく歩いたり、ゆったり時間を過ごしたりすることに適していない。だから福祉政策と都市政策を連動させながら、福祉都市をつくっていくことが求められると広井は言う。
また、広井の言う定常化社会では、時間軸よりも空間軸が重要な社会である。そこでは、古いものも素晴らしいものは素晴らしいと考えられ、田舎も都会もそれぞれによさがあり、地方もそれぞれが尊重すべき個性を持っていると考えられるようになる。
東京R不動産
東京R不動産 / アスペクト
2010/03出版
ISBN : 9784757217621
¥735 (税込)
三浦展さんコメント 10年ほど前、古いけど味があって事務所にしたくなるビルってあるよね、それを集めたホームページをつくったら面白いね、と建築家・馬場正尊君にメールしたら、なんとすでに彼は作り始めていた! それが東京R不動産。事務所用というより、住居用が中心であったが、なるほどこんな古さが実は魅力的なんだ!と、着眼の面白さに膝を打った。
東京シェア生活
ひつじ不動産 / アスペクト
2010/03出版
ISBN : 9784757217539
¥1,470 (税込)
三浦展さんコメント 不況で所得が減った若者が、ひとりで部屋を借りられないからシェアハウスを選ぶのだと思う人もいるだろう。しかしもっと大事なことがある。最近のシェアハウスでは、入居者が自室から出て、自然に交流しやすいように、お互いのつながりが生まれやすいようにしているのである。個人としてのプラバシーもありながら、人と会いたいときは会える、そういうゆるやかなつながりを求める気持ちが若い世代を中心に増えている。
三浦展さんコメント いま、地形に関する本がブームだ。その火付け役が本書。たんなる地形図や教科書とは違い、地理に関心がなくても楽しめる。東京を考えるうえで地形はとても重要だ。大震災後、津波や液状化の問題で、東京でも自宅の海抜を気にする人が現われてきたが、それまでは土地の高さの重要性は忘れられていた。本来、「山の手/下町」というように、土地の高さは階層と結びついている。本書を手に街を歩くと、みえるものが違ってくるだろう。
歴史を考えるヒント
網野善彦 / 新潮社
2012/09出版
ISBN : 9784101356617
¥452 (税込)
三浦展さんコメント 中世史の本だが、本書は文庫で手軽なので読んでみたら、とても参考になった。たとえば「支配」という言葉。中世では支配とは「配分、配布、割り当て」という意味だったという。中世の「支配」は、私が『第四の消費』で論じた「シェア」と近いのではないかと考えた。市民が主体となってメンバーの必要なものを「配分、配布、割り当て」しあえる社会が、私の考えるシェア社会だ。中世について知ることからも、これからの時代を考えるヒントはある。
手仕事の日本
柳宗悦 / 岩波書店
2009/12出版
ISBN : 9784003316924
¥882 (税込)
三浦展さんコメント 山崎正和の消費論で重要な役割を演じているのが「手仕事」という概念であるが、名もない民衆の手仕事に芸術を見出したのが柳だった。30年前は一部の人しか知らなかった柳が、今は、これからの日本人のあるべき新しい生活を提案した人であるかのように再評価されている。原発を必要とする大量生産、大量消費社会ではない時代へのあこがれも、そこには隠れているかもしれない。
「じんぶんや」とは?
こんにちは。じんぶんやです。
2004年9月、紀伊國屋書店新宿本店に「じんぶんや」という棚が生まれました。
「じんぶんや」アイデンティティ1
★ 月 が わ り の 選 者
「じんぶんや」に並ぶ本を選ぶのは、編集者、学者、評論家など、その月のテーマに精通したプロの本読みたちです。「世に溢れかえる書物の山から厳選した本を、お客様にお薦めできるようなコーナーを作ろう」と考えて立ち上げました。数多の本を読み込んだ選者たちのおすすめ本は、掛け値なしに「じんぶんや」推薦印つき。
「じんぶんや」アイデンティティ2
★ 月 が わ り の テ ー マ
人文科学およびその周辺の主題をふらふらと巡っています。ここまでのテーマは、子どもが大きくなったら読ませたい本、身体論、詩、女性学...など。人文科学って日々の生活から縁遠いことではなくて、生きていくのに案外役に立ったりするのです。
ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いします。
「じんぶんや」バックナンバー
こちらのページから今までの「じんぶんや」をご覧いただけます。
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【じんぶんや第88講】三浦展選「これからの都市、郊外、消費社会と人間を考えるための30冊」
場 所 紀伊國屋書店新宿本店 3Fカウンター前
会 期 2013年2月8日(金)~3月中旬
お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店 03-3354-5703