10月を迎えてすっかり秋めいて来ましたが、去る10月1日は社団法人全日本コーヒー協会が定めた「コーヒーの日」でした。9月でコーヒーの収穫が終わり、この日から新しい年度が始まることと、秋冬にコーヒーの消費が増えることが制定の理由だそうですが、たしかに涼しい秋風が吹く季節になると、熱いコーヒーが恋しくなりますね。
読書の秋のお供には、ふくよかなコーヒーの香りがうってつけ。そこで今回の特集では、コーヒーをもっと飲みたくなる本を集めてみました。コーヒーにまつわる本は多岐にわたるため、今回の特集は前後編にわけ、前編はコーヒーについての知識を深める本が中心です(後半は文学編を予定)。小さな豆に込められた歴史と文化、その魅力にとりつかれた人たちが営む個性的なカフェや喫茶店についての本をとりあげます。
コーヒーが世界中で飲まれるようになるまで
コーヒーの歴史は、そのままグローバリゼーションの歴史といっても過言ではありません。アラビアや東アフリカからトルコを経てヨーロッパへ、そしてアメリカや日本へと広まったコーヒーは世界中に独特の文化を生んだだけでなく、「南が生産し、北が消費する」という南北経済格差の象徴でもあります。その複雑にして玄妙な歴史を知るための本をまずはご紹介。
コ−ヒ−の歴史
マ−ク・ペンダグラスト、樋口幸子 / 河出書房新社
2002/12出版
ISBN : 4309223966
¥3,675 (税込)
エチオピアのコーヒー誕生伝説からスターバックスの成功秘話まで、品質の決め手、コーヒー産業の発展と政治経済を揺るがす影響力、コーヒー文化の変遷までを、他に『鏡の歴史』という著書もある調査報道専門のジャーナリストが徹底取材。500ページを超える大冊にしてコーヒー史の決定版。
エチオピア原産とされる小さな豆は、いかにして世界の歴史を動かしてきたか。コーヒーの誕生からスターバックスまで、「一杯のコーヒー」の背後に潜む膨大な歴史を通じて、世界を変えた琥珀色の液体の「真実」が語られる。著者は英国にスペシャルティ・コーヒーを紹介した人物として広く認められている。
コーヒーは石油につぐ巨大市場を形成する一次産品であると同時に、グローバル化時代の南北問題を鮮やかに象徴する農業生産品でもある。多様な意味を内包するその歴史を文脈化して整理し、「コーヒーで結ばれた世界」を見渡すための歴史的視座を明示する、刺激にみちたグローバル・ヒストリーの試み。
アラビアでスーフィー教徒が禁じられた酒のかわりにした飲みもの「カフア」は、17世紀にはヨーロッパ諸国にあいついで伝わり、近代市民社会と切っても切れない存在になっていく。コーヒーという飲み物の誕生から、世界各国に普及するまでのグローバル化の経緯をわかりやすく、かつ楽しく綴った格好の入門書。
イギリスといえば「紅茶の国」というイメージだが、そのようになる以前の17世紀から18世紀にかけて、ロンドンを中心に多くの「コーヒー・ハウス」が存在した時代があった。文学者が集まり、政治論議が交わされ、ジャーナリズムの母胎となったこの場所の来歴と、そこを舞台とする市民の日常生活を描いた名著。
世界でもユニークな日本のコーヒー文化
日本のコーヒー文化は、砂糖もミルクも入れないブラックという飲み方や、ブレンドではないストレート・コーヒーやオールド・ビーンズへの偏愛、アイスコーヒーの発明など独特の発展をとげました。そして今では、ドリップからエスプレッソ、フレンチプレス式まで、多種多様なコーヒーが楽しめる世界有数のコーヒー大国に。そこに至るまでの人間ドラマと、さまざまな個性的な喫茶店/カフェについての本を紹介します。
コ−ヒ−に憑かれた男たち
嶋中労 / 中央公論新社
2008/03出版
ISBN : 9784122050105
¥780 (税込)
日本における自家焙煎コーヒーの「御三家」といわれる人物、銀座「カフェ・ド・ランブル」の関口一郎、南千住「バッハ」の田口護、吉祥寺「もか」の標交紀(しめぎ・ゆきとし)の三氏を取材し、多くの本からのコーヒーにまつわる引用を交えて綴った自家焙煎コーヒー界のカリスマたちの人物録。
自家焙煎の草分け的存在として知られ、2007年に亡くなった後もその影響が衰えることのない、元吉祥寺「もか」の店主・標交紀氏のコーヒーに賭けた生涯をつづった上記本の続編。抽出温度の1℃の違いにこだわり、理想のコーヒーを求めて世界中を旅した彼が求めたものは何だったのか。
東京の小さな喫茶店・再訪
常盤新平 / リブロアルテ
2008/12出版
ISBN : 4896107489
¥1,680 (税込)
1994年に世界文化社から刊行された『東京の小さな喫茶店』に、あらたな店を追加して加筆した本。かつて訪れた喫茶店を再訪してその変化を知り、消えた店を惜しむのみならず、路地裏で見つけた新しい喫茶店にも足を伸ばす著者は、「小さな喫茶店」こそ東京が生んだ庶民の文化であるという。
飲食業界で「個人店」が次々に姿を消していくなか、JR新宿駅構内、改札から徒歩15秒の場所にある立ち飲みカフェ「ベルク」はいつも大勢の客でにぎわう。コーヒーはもちろん、ビール、パン、ソーセージ、いずれも一流の味でありながら値段は大衆的な「どこにもないファーストフード」を実現したその経営術とは?
LIFE IS ESPRESSO
BEAR POND ESPRESSO、菅付雅信 / mille books
2011/09出版
ISBN : 9784902744569
¥1,470 (税込)
ニューヨークで出合ったスペシャルティ・コーヒーの味に惚れ込み、仕事の傍らエスプレッソのバリスタとなる修行をした田中勝幸氏は、2009年に20年ぶりに帰国した日本でたった6坪の小さなカフェを開く。東京・下北沢で「日本で最高のエスプレッソを出す店」の、わずか15ccの飲み物をめぐる闘いの記録。
コ−ヒ−ピ−プル
川口葉子 / メディアファクトリ−
2012/02出版
ISBN : 9784840143752
¥1,365 (税込)
著者は「東京カフェマニア」というウェブサイトの主催者として知られ、個性派カフェについての著書も数多い。東京周辺のみならず北海道の美幌町から福岡県福岡市まで足を伸ばし、カフェや通販ショップなどを経営する新世代の「コーヒー・ピープル」を、共感を込めて取材した一冊。巻末に開業までの簡単な手引きも。
(編集部 A.N.)