日も落ちて夕刻を過ぎれば、だんだんと秋めいて、過ごしやすくなった今日この頃です。お盆や学校の夏休みを、皆さんはどのように楽しまれたのでしょうか?
今年の夏は、赤ちゃんペンギンの数度の脱走や、富士サファリパークで生まれたライオンやヒョウ、アムールトラなど含めた8種類の赤ちゃんたち誕生など、なにかと動物のニュースの多くとりあげられました。お近くの水族館や動物園へと足を運ばれた方も多くいらしたのではないかと思います。
そこで、せっかく動物や海獣と触れあったこの機会に、好奇心や想像力を刺激する「いきもの」の本を「海」「陸」「フィクション」「ノンフィクション」問わずに魅力的な10冊をあつめてみました。
夏休みのおさらいに
世の中に多種多様な生物の分類を美しい写真と一緒に解説した「図鑑」は多くあれど、ここでは「行動学」や「生態学」といった観点から楽しめる本をご紹介します。動物園が100倍楽しくなる2冊です。
「ライオンとトラ、ヒョウとジャガー。大型ネコ類が同じ大陸にいないのは?」など、「そう言えばそうね!」と、目から鱗なトピックス満載の「第1章 進化と棲息地で生態が決まる」から始まり、「尿をかけられるとその気になる。ヤマアラシのプロポーズ」などの驚きのトリビアが沢山詰まった「第3章 暮らしを読み解く面白行動学」など。思わず、この本を持って動物園へ行きたくなってしまう一冊です。
動物の生態図鑑
/ 学研教育出版
2009/10出版
ISBN : 4052031318
¥3,150 (税込)
これといって動物に特別な関心を持たない方にも楽しんでいただける本。「チンパンジーの会話術」や「ハーレムを作るオットセイやアザラシ」「牛がいつも口をモゴモゴさせている理由」のようにおなじみの動物から、「ハダカ」で「デバ」で「ネズミ」といった、まさに動物界の三重苦を背負った「ハダカデバネズミ」の生態などを見開きで図解たっぷりに紹介しています。
まだまだある、こんな種類の行動学
昆虫学者や動物行動学者、写真家。テーマを絞り、その行動を愛情もってじっくりと観察された人々が贈る著作物は、意外な発見に溢れ、子供の頃に読んだ『ファーブル昆虫記』のように、私たちを「ワクワクの世界」へと誘ってくれます。
本日も、大学は動物事件でにぎやかなり!
自然に囲まれた小さな大学で起きる動物たちと人間を巡る珍事件を人間行動学の視点で描く、ほのぼのどたばた騒動記。あなたの "脳のクセ" もわかります
(『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』帯より)
アフリカ旅日記 ゴンベの森へ
星野道夫 / メディアファクトリ−
2010/08出版
ISBN : 4840134987
¥620 (税込)
約40年にわたりタンザニアのゴンベの森でチンパンジーの観察研究を続けているジェーン・グドールに会いに行った星野道夫の旅の記録。1996年8月にアラスカ・カムチャッカ半島での取材中、ヒグマに襲われて命を落とすこととなった星野道夫の、その旅立ちの前日に脱稿されたのが本書です。巻末に特別収録された、ジェーン・グドールからの寄稿「ミチオがそこにいるだけで」も星野道夫ファンには必読です。
『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』ちょっと面白いタイトルの本書は、鳥取環境大学の教授、小林朋道の人間動物行動学エッセイ。大学内外で繰り広げられるドタバタは、まるで漫画『動物のお医者さん』を読んでいるかのごとく。2007年に本書が出版されてから、毎年1冊ずつ新作が刊行されるこの『先生、〜』シリーズは、次々と読みたくなってしまう魅力に溢れています。
コスタリカの密林を駆け巡る昆虫学者の西田賢司が出会った珍虫たちをまとめた書。『わっ! ヘンな虫』のタイトル通り、思わず「なんじゃこりゃ!」と声をあげたくなってしまいそうになる「超合金のような虫」から「世界一きれいなゴキブリ」「ダースベイダーにそっくりな虫」などがオンパレード。もちろん、見た目だけでなく、その驚きの生態にもせまります。本書を読めば、近所のアリを見ることでさえ楽しくなる一冊です。
ちょっとまじめに考えてみる気分の、海の本。
海の話をしよう。まだ誰も知らない海の物語りを。(『海獣の子供』P.4 〜 P.5 より)
アザラシの赤ちゃん
小原玲 / 文藝春秋
2011/07出版
ISBN : 4167801426
¥830 (税込)
どこまでも丸く白い、フワフワの「タテゴトアザラシ」の赤ちゃん。実は、私たちも良く知る、この「白くてフワフワ」な期間は生まれてからたった2週間だけ。動物カメラマンの小原玲が20年もの歳月を費やして撮りためた、ポケットサイズの文庫版の写真集です。どこへ行くにも一緒に居られるのが嬉しい一冊。「アザラシの赤ちゃんの可愛らしい写真を見ているだけでシアワセ!」という方にお薦めの写真集です。
上でご紹介した写真集のように、可愛らしいアザラシやイルカといった水棲生物たちが多く住まう海。遠く宇宙から地球を見れば、地球が青い星なんだとわかるように、私たちのこの地球の大部分は海でできていると言っても差し支えはないと思います。そして地球にとって忘れてはならない環境問題が、そこにあることもまた事実です。これからご紹介する3冊は、そんな「環境問題」を勧善懲悪の世界に走るでもなく、「ちょっと考えてみようかな?」なんて思わせてくれる作品だと思います。
遠い海から来たCoo
景山民夫 / 角川書店
1992/03出版
ISBN : 4041736064
¥580 (税込)
生まれたばかりの恐竜と、12歳の少年洋助の海洋冒険ファンタジー。第99回直木賞受賞作品です。アニメとして映像化もされているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。刷り込みによって恐竜の母となった少年の前に、突然大きく開かれる世界。それにあわせて急激に成長し、大人への一歩を踏み出す少年模様もまた魅力のひとつです。
海獣の子供
五十嵐大介 / 小学館(コミック)
2007/07出版
ISBN : 4091883680
¥750 (税込)
五十嵐大介の長篇処女作である本作品は、第12回手塚治虫文化賞にノミネートもされています。楽しみにしていた夏休みを台無しにしてしまった主人公の少女琉花が、海から来た不思議な少年たちと出会うところから物語が始まります。全5巻とおして、細やかな筆致で繰り広げられる壮大な海から宇宙へと繋がるストーリーは、圧巻としか言いようがないほど魅力溢れた作品です。
なぜクジラが西洋で特別扱いされるのか? 鯨の自然史や捕鯨の歴史から始まり、動物保護運動、や抗議ビジネスとしての環境保護、捕鯨文化と世界観などをとおして、鯨が他の動物よりも大きな権利を持つ理由と、鯨が神聖視されるようになった過程を紹介する。「欧米人の鯨観の謎に迫り、その恣意性を暴く」と帯に紹介された本書は、著者河島基弘が在学したエセックス大学社会部で書き上げた博士論文をもとに加筆修正された一冊です。
ちょっとひと息、おまけのお話
二〇〇一年三月、ルーマニアのマリウス・シュナイダーによって本の虫が発見された...(『本の虫』P.8より)
「本の虫」といった言葉は、「本を読むことをこよなく嗜好する人」を意味するものですが、「いやいや実際に、本や人に棲息する虫を発見したんです!」というのがこれ。作家の薄井ゆうじ氏が翻訳したという本書は、そんな虫たちの生態やそれらに感染した人の介護や看病をなど、本の虫にまつわるアレコレを詳細に紹介しました。大きくはヨミムシ類とカキムシ類に分けられ、さらに細かく分類されるショダナムシやヒタスラヨミムシ、ハウツームシなど、読んでいてクスクスと笑いのこみ上げるチャーミングな一冊です。
さて今回の「いきもの」特集、いかがでしたでしょうか?
「視点が変わると、ものごとががらっと変わる」なんてことは良く言われることですが、今回ご紹介した本の中には、数々の驚きに溢れた生き物が多く登場します。アニメの世界ではとかく悪役にまわるハイエナが、何故あのような不格好な見た目なのか? や、家の中へ入ってくると歓迎されるゴキブリがこの世の中にいることなど、楽しい発見の連続でした。最近鳴き出した鈴虫の音色に耳を傾けながら、近所に住む「いきもの」に思いをめぐらす初秋も楽しいものです。
(編集部 奥村知花)