あやかしの物語 ―――― うつくし、かなし、おそろし
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晩夏の蝉しぐれは嗚咽のよう。
かなかなかなかな死にとうない死にとうない・・・
ひと夏を越えた木々の枝葉は黒々と長い腕のよう。
ざわざわざわざわ此方へこい此方へこい・・・
逢う魔が時―――物狂おしい夏の夕暮れ。
魔ものが差し出した手をしっかり握ってしまった人間。
人間とともに生きたかった魔もの。
その交流の果てにあるのは幸せか不幸せか。
無垢な想いだけがしんしんと募る六つの異種交流譚。
人間とともに生きたかった魔もの。
その交流の果てにあるのは幸せか不幸せか。
無垢な想いだけがしんしんと募る六つの異種交流譚。
ぽん、ぽん、ぽん。オウ。ヤカ。アリ。
闇の中で三人の童が鞠を蹴る。よもや人間の子ではあるまい。
あれはあやかしか――異形のものが見えてしまう、自分もまた異形のものなのか?世にも類まれなる光の君は、「見えてしまう」がゆえに打ち明けられぬ孤独を背負って生きてきた。葵の上に取り憑いた魔ものの呪詛を解くために外法の陰陽師とともに謎に挑む。
闇の中で三人の童が鞠を蹴る。よもや人間の子ではあるまい。
あれはあやかしか――異形のものが見えてしまう、自分もまた異形のものなのか?世にも類まれなる光の君は、「見えてしまう」がゆえに打ち明けられぬ孤独を背負って生きてきた。葵の上に取り憑いた魔ものの呪詛を解くために外法の陰陽師とともに謎に挑む。
黒い髪の女が子を慕って、れうれうと泣いている。
黒い羽根の鳥が人間の男に懸想して、れうれうと啼いている。
黒い闇の中で魔ものが成仏できずに、れうれうと哭いている。
女は鳥、女は魔もの。うつくし、かなし、おそろし。
黒い羽根の鳥が人間の男に懸想して、れうれうと啼いている。
黒い闇の中で魔ものが成仏できずに、れうれうと哭いている。
女は鳥、女は魔もの。うつくし、かなし、おそろし。
今は昔、闇は紛れもなく闇であったころ。
人も魔ものも存在感は五分(フィフティ)五分(フィフティ)。
妖魔のたぐいも幽鬼のたぐいも、境を越えて来たとて、誰が文句を言えようか。
出会えば運のつき。出会わずにすめば命拾い。
人も魔ものも存在感は五分(フィフティ)五分(フィフティ)。
妖魔のたぐいも幽鬼のたぐいも、境を越えて来たとて、誰が文句を言えようか。
出会えば運のつき。出会わずにすめば命拾い。
ざざんっ、むうううううううう
ざざざざんっ、むうううううううう
海から離れても耳を塞いでも波の音から逃れられない。
人魚の呪詛は、不老不死を得た男を永久に捉(とら)まえた。
ざざんっ、むうううううううう
ざざざざんっ、むうううううううう
ざざざざんっ、むうううううううう
海から離れても耳を塞いでも波の音から逃れられない。
人魚の呪詛は、不老不死を得た男を永久に捉(とら)まえた。
ざざんっ、むうううううううう
ざざざざんっ、むうううううううう
旅本作者 蝋庵(ろうあん)先生の迷い癖は手に負えません。
峠を越えたらあの世へふらり。小径を行けば異界にするり。
今日もまた、道に迷ってあやしきものたちに出会ってしまった・・・
峠を越えたらあの世へふらり。小径を行けば異界にするり。
今日もまた、道に迷ってあやしきものたちに出会ってしまった・・・
百物語をいたしましょう。ふしぎなはなし、奇妙なはなし、背筋がぞくりとするはなし。ひとつひとつ語って聞かせてくださいませぬか。
百まで語り終えたら幽霊があらわれるといいますから、九十九でやめることにいたしましょう。え?幽霊に会ってみたい、ですって?
それでは百話目は、この本を閉じてからあなた様ご自身がお話しになってください。でも、わたくしはその前にお暇いたしますよ。
百まで語り終えたら幽霊があらわれるといいますから、九十九でやめることにいたしましょう。え?幽霊に会ってみたい、ですって?
それでは百話目は、この本を閉じてからあなた様ご自身がお話しになってください。でも、わたくしはその前にお暇いたしますよ。
怨み妬み憎しみ...人の心のあさましきものを喰らいながら、お江戸の鬼は肥え太る。辻で、橋のたもとで、柳の葉陰で、お店(たな)の奉公人たちが見たものは―――素朴な心が問いかける。どこまでが人、どこからが鬼。
触れなば祟られそうないわくの品を気にせず仕入れて気にせず販売。
古道具屋 皆塵堂でお買い物すればもれなくおまけが憑いてくる!
古道具屋 皆塵堂でお買い物すればもれなくおまけが憑いてくる!
平安の昔、都の夜を闊歩し跋扈していた魔ものたちは今もひっそりとそこで生きながらえている。らしい。
じっとり重くて濃い闇が、吹き溜まりのように、京都の小路には残っている。らしい。
京都の祭りの夜には、異界への通い路が開く。らしい。
ざざざざざざ・・・生ぬるい風が吹き抜ける。竹林の手前で、狐面をかぶった男が細い目をもっと細めて満足げに声を、漏らす。
「こーん!」 ―――これは幻覚か?
じっとり重くて濃い闇が、吹き溜まりのように、京都の小路には残っている。らしい。
京都の祭りの夜には、異界への通い路が開く。らしい。
ざざざざざざ・・・生ぬるい風が吹き抜ける。竹林の手前で、狐面をかぶった男が細い目をもっと細めて満足げに声を、漏らす。
「こーん!」 ―――これは幻覚か?
うつし世の小路と地続きに異界の小路が網の目のようにはしっている。そんな感じ。ふたつの世界は「越境」するまでもなくすでに混ざりあっていて・・・電車のドア付近に立っている彼、狐かもしれない。
斜め向かいの席の彼女、鼬(いたち)かもしれない・・・
斜め向かいの席の彼女、鼬(いたち)かもしれない・・・
過剰な光も音もなかったはるか昔、辺りは人ならぬものの気配や視線に満ちていた。
昔の人のように、季節の移ろいに心を留め、自然の囁き、蠢きに耳をすますと、
今もまだかすかに、息づくもの、潜んでいるものがあるかもしれない。
秋はもう間もなく。
(編集部 藤崎)















