【じんぶんや第79講】 チーム「統治」を創造する 選 "「いいね!」から始まる社会をどう描くか――変革を想像するためのヒント"
紀伊國屋書店新宿本店月がわりブックフェア「じんぶんや」、今月は気鋭の若手研究者"チーム「統治」を創造する"の皆さんにご選書いただきました。また今回の選書に際し、『「統治」を創造する』の編著者である西田亮介さんに「巻頭言」をお寄せいただきました。
「巻頭言」
世間にはいま、否定的で絶望的な言説が溢れている。そのほうが人々が飛びつき、話題になるためか、ますますその手の言説が出まわることになる。
2011年には東日本大震災もあったし、そもそも円高や少子高齢化という日本型システムの基礎の危機はそれ以前から存在していた。あまり慣れ親しんでしまったため、日本の社会保障と経済の構造は身動きが取れなくなってしまっている。
危機の反動からか、過剰なグローバル志向と、広範な普及可能性の乏しい定常状態待望論(今の生活水準を保ちたい)が姿をみせている。
これらはともに従来の日本社会が積み重ねてきた有形、無形の資産を捨て去る革命待望の言説だ。大転換を目指してゼロからスタートを切るのであるから、どちらの選択肢も日本社会が現在持っている競争優位を損なってしまうことが容易に予想される。
しかし、人口と内需、さらにわたしたちのエートスをしても、新興国、そして他の先進諸国と「同じ競争」をすることは望ましくないのではないか。むしろ同種の競争を回避し、あるいはほどほどに参加しつつ「残余」に徹底して注力することが必要であろう。
このような「軌道修正」では現状の諸条件を参照しつつ、さらに過去の日本社会の資産を活かしながら、新しいポジションを目指していくことになる。いや、そのポジションの位置さえ議論し探索しなければならない。
そのためにこそ統治の方法論の組み換えが求められているのだ。
現行の統治システムは約60年前の日本社会にとって、あまりにフィットし、ロバスト(堅牢)なものであった。ただし、当時それらを構想した統治者たちは、そのシステムが時限付きのものであったことを明言していた。
現状はどうか。改憲論こそ何度もでてきたが、それらはおもにイデオロギーに根ざしたものであって、価値観が先行している。到底、多くの人々が議論に参加できるものではなかった。
現行システムの堅牢さの限界に人々は薄々気づいていたはずだが、不幸にも震災と震災復興という局面においてそれらが顕在化してしまった。意思決定は混乱し、デマが飛び交い、また矛盾する雇用と労働条件など多様な間接被害が報じられている。
一方で、民間による新しい社会貢献のあり方が実践され、さらに地方政治から統治を変革しようとする動きも着実に活発化している。
統治の単位は確実に小さくなり、政治や行政のみならず多様な主体との協働、すなわち「ガバナンス」へと移行しようとしているが、現行システムが稼動している以上、ガバナンスを実現するための統治の方法論をここで創りだす必要がある。
そこで現代日本社会とその行き先を考え直す、つまり統治を変革するためのヒントとなる書籍を選んだ。
楽観的、とはいえなくとも、積極的に未来を創造/想像するための一冊を手にとっていただければ幸いである。(西田亮介さん)
"チーム「統治」を創造する"プロフィール(9名)
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西田亮介(にしだ・りょうすけ)
1983年生。東洋大学非常勤講師。中小機構リサーチャー、デジタルハリウッド大学大学院非常勤講師等を兼任。専門は情報社会論と公共政策学。共著に『グローバリゼーションと都市変容』(世界思想社)など。
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塚越健司(つかごし・けんじ)
1984年生。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程。専門は社会哲学。ミシェル・フーコーの権力論からウィキリークスまで幅広く研究。共著に『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)。その他『週刊エコノミスト』、『月刊サイゾー』等に論考を寄稿。
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谷本晴樹(たにもと・はるき)
1973年生。現在(財)尾崎行雄記念財団主任研究員。その他、ネットメディア「政策空間」編集委員。Inter Press Service Japan理事。著書に『咢堂言行録―尾崎行雄の理念と言葉』(世論時報社)等。
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吉野裕介 (よしの・ゆうすけ)
1977年生。京都大学博士(経済学)。日本学術振興会特別研究員、スタンフォード大学客員研究員を経て、現在京都大学GCOE研究員。共著に『進化経済学の諸潮流』(日本経済評論社)など。
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淵田仁(ふちだ・まさし)1984年生。福井県出身。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程、日本学術振興会特別研究員。専門は思想史。
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藤沢烈(ふじさわ・れつ)
1975年生。(社)RCF復興支援チーム代表理事。一橋大学社会学部卒業後、飲食店経営、マッキンゼーを経て独立。ベンチャーやNPOの支援に携わる。東日本大震災復興対策本部非常勤スタッフ。
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生貝直人 (いけがい・なおと)
1982年生。東京大学大学院学際情報学府博士課程在籍中。慶應義塾大学SFC研究所上席研究員(訪問)、NPO法人クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事などを兼任。著書に『情報社会と共同規制』(勁草書房)。
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イケダハヤト (いけだ・はやと)
1986年生。早稲田大学政治経済学部卒業。半導体メーカー勤務後、ベンチャー企業にてソーシャルメディアに関する事業部を立上げ、フリーランスライターとして独立。政治家、行政機関のソーシャルメディア活用支援も行っている。著書に『フェイスブック』(講談社)。
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円堂都司昭(えんどう・としあき)1963年生。文芸・音楽評論家。『「謎」の解像度 ウェブ時代の本格ミステリ』で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞。小説やポップ・ミュージックのほか、ディズニー、批評まで広い分野を論ずる。著書に『YMOコンプレックス』など。
チーム「統治」を創造する 選書+コメント
インターネットを黎明期から追い続けてきた著者が、ソーシャルメディアの可能性の極限を追求する。
自らを「実験台」にしつつ、「公共」概念の変容可能性を説く。
生態学、民俗学、そして情報産業論を切り開き、さらに万博構想や大学経営など実務にも多大な影響を与えた碩学、梅棹忠夫の生涯を、30年かけて最も密に描いた一冊。
震災は日本社会にどのように影響を与えたのか?
あるいは日本社会の諸条件は震災復興にどのように影響したのか?
複数の社会学者が統治、グローバル化、メディア、地域産業復興、NPO等多様な視点で描く。
筆者は「日本的経営」「日本的福祉」「自民党型中央集権」の三点をして日本型システムと呼び、その完成を1973年に見出す。さらに日本人が「安定」を望み続けたものの、「自由」のビジョンを持たなかったことに現在の統治のねじれを見出す。統治と社会を考える上で必読の一冊。
ウィキリークスの理念や詳細な活動履歴を説明しながら、同時にジャーナリズム、技術、政治、思想等幅広い観点から論じた一冊。ウィキリークス入門書として最適なだけでなく、情報社会の諸問題がわかります。
人口管理や統計など、フーコー思想の中で最も注目される統治の問題について、彼が論じた論文集。中でも、カントと自律の問題を論じた傑作「啓蒙とは何か」、「全体的なものと個的なもの」は必読です。
20世紀以降のアメリカにおける政治哲学史は、人々の統治のあり方をめぐるスリリングな思想的格闘の歴史でもある。ロールズやサンデルの思想をわかりやすく、かつ問題点を明確にした上で、社会の未来を見据えよう。
未来への意志と思想を人に伝えるためには、パブリックスピーキングの技術が必要不可欠であり、政治、ビジネス、ゼミ等、どこでも応用可能だ。言いたいことがうまく伝えられない人にオススメの一冊。
熟議をどのように民主主義に組み込むか。その回答の一つが本書にあります。著者の提唱する「熟議型世論調査」は、今まさに日本でも導入されようとしています。新しい「政治」の形を先取りしたい方にお勧めの一冊。
「新しい情報技術が社会を変える!」そんな話にもうダマされたくない貴方にお勧め。
「情報が社会を変えると信じたがる社会」の正体とは?
モ−リ−・ウィノグラッド、マイケル・D.ハイス / 岩波書店
2011/04出版
ISBN : 9784000220569
¥3,360 (税込)
「Change!」を掲げ、大統領となったオバマ。アメリカで台頭している「新しい政治」を作り出しているのは、SNSを自在に操る「M世代」だった。最近日本でも「C世代」が話題となっていますが、政治を支える新しい世代の登場に目が離せません!
「タダより安いものはない」って本当?
そりゃタダで手に入るに越したことはない。
でもそれってビジネスとしてどうなの?
ええ、それが成立するんです。秘訣はこの本に。
情報社会の先には何がある?晩年失明した梅棹がそれでも見据えていた未来とは。
ぼくたちも「何のために」「どのように」未来を創造していくかを、具体的に論じる必要がある。
みんなが国に「たかり」を続ければ、何が起こる?
激動の時代を生きたハイエクの生涯ぶれなかった主張。
「社会主義、独裁国家、そして福祉国家ですら、自由を侵すという意味では同根である」
民主主義の限界、危機を語る前にまずもってしなければならないことは、「民主主義って何だ?」
という根本的な問いの再考である。「民主主義」の教科書的理解を捨て去るためにまず初めに読むべき古典。
パブリックとプライベートの区別はどこにあるのかという問題に言及している古典的名著。公/私の間にどのような線を引くべきなのか?ソーシャルな空間を生きるわたしたちにとって、カントの議論は必読である。
ルソーの『社会契約論』を現代にヴァージョンアップするとすれば、どのようになるか?実験的とも言える新しい社会契約論。オープンガバメントのひとつのあり方を具体的に示した一冊。社会思想入門書にも最適である。
日本におけるリーダーシップ像を描いた珠玉の一冊。
ホンダ成長の立役者による、ビジネスにおけるリーダーの在り方を描いた一冊。
創造を志すことができない人間の根源的な弱さを描いた一冊。
なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門
岡田斗司夫、福井健策 / 阪急コミュニケ−ションズ
2011/12出版
ISBN : 9784484112244
¥1,470 (税込)
情報の自由を実践する評論家と、日本の著作権法実務を代表する辣腕弁護士による珠玉の対談。著作権という仕組みの存在意義にまで立ち返った考察を展開する、ネット時代のコンテンツ産業を考える上で必読の一冊。
ウィキリークス、フェイスブックが私達の社会にもたらす根本的影響とは何か。情報社会における「統治」のあり方が、従来の国家による市民の監視から、市民による国家の監視という形に逆転していくことを論じる。
著作権、プライバシー、表現の自由。情報社会のルール形成は「誰が」行うべきなのか。国家による規制と、市場による自律的秩序形成の二元論を超える、公私の「共同規制」の可能性を論じた日本で初めての研究書。
「硬化した組織を開放し、ソーシャルメディアなどで繋がった外部のリソースをいかに活用するか」について説かれた実践的な一冊。
アントレプレナ−の教科書 新規事業を成功させる4つのステップ
スティ−ブン・ゲイリ−・ブランク、堤孝志 / 翔泳社
2009/05出版
ISBN : 9784798117553
¥2,940 (税込)
特にウェブを使った事業を立ち上げる際に起こりうる、様々な失敗を防ぐためのノウハウが記された一冊。オープンガバメントにおけるAPI活用の観点などから有用。
Ries, Eric / Crown Pub
2011/09出版
ISBN : 9780307887894
¥2,432 (税込)
ITを活用した「継続的なイノベーション」を生み出すための方法が記された一冊(洋書)。
同じくオープンガバメントにおけるAPI活用の観点から、有用な著書。
グーグルの72時間ドキュメントをはじめ、東日本大震災に対するITの功罪について多くのレポート、論考を集めた本。非常時にこの技術をどう使うべきか、いろいろ考えさせられる。
ライヴで録音OK、チケット直販――などのサービスで熱狂的ファンを作ったグレイトフル・デッド。彼らは、フリー、シェアといった今どきの思想の先駆者だった。
この本で整理したように、今世紀の批評ではウェブや郊外が大きなテーマであり続けた。そして、これからの統治を考える時、ITの活用やまちづくりの見直しは避けて通れない課題だ。
「じんぶんや」とは?
こんにちは。じんぶんやです。
2004年9月、紀伊國屋書店新宿本店5階売場に「じんぶんや」という棚が生まれました。
※78講目より3階売場へと場所を移し、気持ち新たに出発いたしました。
「じんぶんや」アイデンティティ1
★ 月 が わ り の 選 者
「じんぶんや」に並ぶ本を選ぶのは、編集者、学者、評論家など、その月のテーマに精通したプロの本読みたちです。「世に溢れかえる書物の山から厳選した本を、お客様にお薦めできるようなコーナーを作ろう」と考えて立ち上げました。数多の本を読み込んだ選者たちのおすすめ本は、掛け値なしに「じんぶんや」推薦印つき。
「じんぶんや」アイデンティティ2
★ 月 が わ り の テ ー マ
人文科学およびその周辺の主題をふらふらと巡っています。ここまでのテーマは、子どもが大きくなったら読ませたい本、身体論、詩、女性学...など。人文科学って日々の生活から縁遠いことではなくて、生きていくのに案外役に立ったりするのです。
ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いします。
「じんぶんや」バックナンバー
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【じんぶんや第78講】チーム「統治」を創造する 選"「いいね!」から始まる社会をどう描くか――変革を想像するためのヒント"
場 所 紀伊國屋書店新宿本店 3Fカウンター前
会 期 2012年4月7日(土)~5月中旬
お問合せ 紀伊國屋書店新宿本店3階 03-3354-5703

































