「今年の秋は、どこへ行ってしまったんだろう?」 などと、なかなか寒くならない気候に首を傾げる日々が続きましたが、立冬を迎え、ようやく早朝の寒さが例年に追いついてきた今日この頃です。しかし侮るなかれ、寒さは冬にむけて、ジワリジワリと確実にやってくるはず! そしてそんな季節に必要なのは、やっぱり「冷え対策」です。
近年、身体を温める「生姜(ショウガ)」が注目されていますが、まだまだブームは続いているようです。
「おろしスプーン付きのレシピブック」とありますが、どちらかと言えば、「レシピブック付きのおろしスプーン」という感じ。でもこのおろしスプーン、主婦や自分で料理する人には、なかなか納得の品。スプーンの上で生姜がおろせて、そのまま合わせダレの中へジャボンと入れてかき混ぜることが出来ちゃいます。生姜専門店を営む森島土紀子氏が紹介するレシピブックで、これからの寒さに耐性をつけるのも良いかもしれません。
身体を温めるのは、健康の「基本の基」といわれていますが、読書でだって身も心もホカホカと温めることができるはず。幸せな話を聞いただけで何だか心があったまったり、やさしさの沁み入る物語を読んで胸のあたりががヌクヌクした経験は、誰だって一度や二度は経験したことだと思います。というわけで、「読む生姜」のような「あったまる」本の中から「猫本」「お風呂本」「人の温かさに触れる本」の3つの視点であつめてみました。
猫本
ベッドに入り、おふとんが少しずつ温まりだすと、忍び寄る毛むくじゃらの生物......。羽布団の中に、毛布の上に、あるいは枕元に寄り添い、なにやら満足そうな音を「ゴロゴロ」と奏でる可愛らしい動物。そう猫です。猫を飼っている人なら、寒い季節を心待ちにする、こんな気持ちが判るはず。
そんな猫にまつわるエッセイや小説は、この世に沢山出ていますが、ここではそんな中でも、読んだらちょっとだけ猫を見直したり「ほっこり」とさせてくれる作品を、少しだけご紹介します。
「そのときがきたら、必ずぼくがついていてあげるよ。
きみのおかあさんと、約束したんだからね」
『カモメに飛ぶことを教えた猫』ルイス・セプルベダ 本文より
紹介される本を、片っ端から読みたくなる猫本の中の猫本
猫だましい
河合隼雄 / 新潮社
2002/12出版
ISBN : 4101252262
¥515 (税込)
こころの専門家で、愛猫家の河合隼雄が紹介する、古今東西の猫物語についてのお話をまとめた1冊。『長靴を履いた猫』や『100万回生きた猫』から『鍋島化け猫騒動』と、誰でも一度は読んだことのあるものから、レアな猫本まで紹介する本書は、猫好きさんや、猫本の第一歩には特にお薦めの本です。
猫に人生を振り回されて喜ぶ人の話
猫のいる日々
大佛次郎 / 徳間書店
1994/11出版
ISBN : 4198902143
¥580 (税込)
『赤穂浪士』や『鞍馬天狗』シリーズでお馴染みの大佛次郎もまた、「強烈な愛猫家」と言っても過言でないだろう。「いちどきに飼うのは15匹まで」などと言いながら17匹に増え、それでもコレットの本を読めば同じ猫を渇望し、『イーゴリ公』を作曲したボロディンの飼う「釣好き猫」にふふふと笑う。本書は、その強烈ぶりを垣間みることの出来る数々のエッセイや小説、童話をぎゅっとひとつにまとめた猫好きさんには垂涎の1冊。
不可能を可能にする猫の友情にホロリとくる
カモメに飛ぶことを教えた猫
ルイス・セプルベダ、河野万里子 / 白水社
2005/11出版
ISBN : 4560071519
¥840 (税込)
黒猫の主人公ゾルバが、死にゆく一羽のカモメと交わした3つの約束。それは「卵を食べないこと」「雛の面倒を見ること」「ひなに飛ぶことを教えること」だった......。チリ人でありながら、政治的な理由で投獄・亡命を余儀なくされ、ヨーロッパでベストセラー作家になった著者の贈る「異なるものどうしの愛」のおはなし。「誠実」「懸命」といった美徳についてちょっと考えさせられ、気がつけば、胸のあたりがホンワカとしてきます。
子供ゴコロを忘れない著者が贈る猫ファンタジー
『鴨川ホルモー』で一躍有名になった万城目学のちょっと切ない繊細ファンタジー。夫には老犬、そして外国語を話す優雅な猫のマドレーヌ夫人と小学一年生のかのこちゃん。子供の頃にはリアルだった不思議な世界を思い出させてくれる作品です。
お風呂本
寒くなってくると、バスタブにたっぷりと張ったお湯に浸かる時間がしみじみと有難く感じるものです。温かい湯に、そーっと足先を入れ、しだいに血管が広がりゆくのを感じながら、肩まで浸かったときに感じる至福は、他には代え難いのではないでしょうか?
湯あたりしないように、小篇〜中篇のものを選んでみました。浴室から始まる「空想世界」のお供にいかがでしょう。きっと「此処ではない何処か素敵な場所」へと意識を運んでくれることでしょう。
こういうノンシャランでナンセンスな絵本に、戦後末期に出合ってじつにじつに 愛読した。(中略)戦後もレオポルド・ショボーというこの作家のことがずっと 気にかかっていた。『犬が育てた猫』吉行淳之介 「『年をとったワニの話』」本文より
鋭い人間描写対決
器用なカポーティ vs 不器用なモーム
カポ−ティ短篇集
トル−マン・カポ−ティ、河野一郎(1930−) / 筑摩書房
1997/02出版
ISBN : 4480032460
¥819 (税込)
1作目の小篇「楽園への小道」は、これが1960年に書かれた作品とは思えないほど、現代の婚活女子も驚きの新しい術が紹介される。「ああ、こおいうことってあるよね」と語りかけてくるような人間模様やその悲喜こもごもを描いた作品に、読者をぐいと惹き込むのがカポーティの魅力と言っても過言でないはず。
モ−ム短篇選
ウィリアム・サマセット・モ−ム、行方昭夫 / 岩波書店
2008/09出版
ISBN : 4003725026
¥882 (税込)
「人間嫌い」と称されるモームですが、好きと嫌いは表裏一体。本当の人間嫌いならば、このような鋭い人間描写は出来ないはず。同性愛者なだけに、当時の「ティピカル奥様」の描き方には多少の悪意は感じるものの、彼女たちの真剣さやジェラシーが本気であればあるほど、物語を滑稽に喜劇に仕立て上げるのです。この作品集は、バスタイムを痛快爽快なひと時にしてくれるでしょう。
ファンタジー対決
イタリアのアイロニー vs フランスのエスプリ
猫とともに去りぬ
ジャンニ・ロダ−リ、関口英子 / 光文社
2006/09出版
ISBN : 4334751075
¥560 (税込)
教育者でもある児童文学作家のロダーリが、子供たちとのやりとりを反映させてて書き上げたのが、表題作の「猫とともに去りぬ」です。家族から、疎まれがちに感じていたおじいさんが、ある日突然猫になっちゃった! というお話。7歳のクリスマスに女の子が貰ったちょっと怖いお人形の話「お喋り人形」や、魚になってヴェネツィアを救う一家の話など、16編も収蔵される本書は、ファンタジーの玉手箱のような1冊です。
年をとったワニの話
レオポルド・ショヴォ−、出口裕弘 / 福音館書店
2002/11出版
ISBN : 4834019004
¥735 (税込)
息子のルノー君に語ったお話を集めたこの「ショヴォー氏とルノー君のお話集」は全5巻。フランスのエスプリが凝縮された全集です。年をとって孤独なワニが、若いタコと恋仲になった。ワニは毎晩タコの足を一本ずつ食べ、とうとう恋人を丸ごと食べ、ほんとにおいしいとおもい、そのあと苦い涙を流した......。という、ちょっとナンセンスなユーモア満載の中篇4篇を収蔵した作品集。
人の温かさに触れる本
幸せな気分だったりやさしい気持ちでいたりと、愛情に溢れているときに人は、案外寒さを感じにくいものかもしれません。そう考えてみると、人間愛に溢れ、慈愛に満ちた本を読むことは、身体を温めると言っても過言ではありません。以下にご紹介する3冊は、まるで『北風と太陽』のお日様のように、ポカポカとやさしい気持ちにさせてくれるはず。
卒業
重松清 / 新潮社
2006/12出版
ISBN : 4101349193
¥662 (税込)
本書は、著者・重松清に「『卒業』という作品集は(中略)四十代の僕の原点になるかもしれない」と言わしめた1冊です。生きていくうちには、苦しいことや哀しいこと、うまく行かないことも多くあるけども、それでも、慈愛に満ちあふれることは、人生をより豊かに、幸せにすることが出来る。娘に、息子に、父に、母に、家族を持つ全ての人に読んでみて欲しい、家族をテーマにした珠玉のエンターテイメント。
錦繍
宮本輝 / 新潮社
2004/03出版
ISBN : 4101307024
¥515 (税込)
人間の美徳とされる「誠実さ」「温かさ」「やさしさ」がたくさん詰まった作品です。ある事件によって、愛し合いながらも離婚しなくてはならなかった二人が、10年後の蔵王で偶然の再会を果たす。その後、二人に交わされた12通の往復書簡によって物語が進んでいくのだが......。「他者へ慮る配慮」とは、「愛すること」とは何なのかを投げかけて、やさしさを心のひだに沁み入らせ、読者の心をポカポカと温めてくれるはず。
アメリカでは『クリスマス・キャロル』と並んで、この『素晴らしき哉、人生!』を観ることは、もはやクリスマスの定番。本書は、この映画監督のフランク・キャプラの評伝です。移民でありながらアメリカンドリームを成した彼が「人間愛にあふれた」ものを多く撮り続けたことの理由には「世界的な大恐慌の中に、ひたすら温かく人々の心を励ましたい」という願いがあったそう。人間とは? を改めて考える1冊です。
人から温めてもらいたいと思うなら、まず自分から人を温めなくてはいけないのかも?! だったら、最初の一歩は自分が温かい人にならなくては! と、自分にも向けてチョイスしてみたこの特集ですが、いかがでしたか?
「この本読んであったまってみたい!」と思って頂けたら幸いです。是非お手に取ってみてください。
(編集部 奥村知花)