【ランキング特集】 シンガポールで人気の小説は? ~英訳されたグローバル時代の文学を読もう~
日本国内のランキングを取り上げることが多いこの特集ですが、海外ではどのような本が人気なのでしょうか?
ある方から「シンガポールでは多様な文化の小説が人気で、書店にコーナーがあるそうだ」と聞いて、調べてみました。
6月の典型的な最高気温が31℃、経済成長も著しいシンガポール共和国は、中華系、マレー系、インド系の住民が多く、さらに貿易のために訪れるビジネスマンや観光客で国際的な雰囲気に溢れる、ホットな都市国家です。
紀伊國屋書店 シンガポール本店のケニー・チャン店長と、バイヤーのクララ・リムさんに現地の読書傾向を尋ねてみました。

ケニー・チャン店長
チャン店長 「老若男女、学生から社会人まで、幅広い層のお客様が来店されます。観光客も結構多いですよ。」
リムさん 「人気が高いのは映画の原作小説。映画公開前から話題になって売れていく傾向があります。あとは人気作家さんの新刊とか。昔のお伽話を現代風にアレンジした作品もファンが多いです。例えばニール・ゲイマンさんのファンタジーや、Fablesというアメコミが流行ってます。」
そんなシンガポール本店で人気の小説は? 総合ランキングは以下の通りです。
《シンガポール本店 小説ランキングトップ3》
1位は、映画にもなった『レベッカのお買い物日記』最新巻。熱心な海外ファンが多いシリーズです。
Kinsella, Sophie / Transworld Publishers Ltd
2011/04出版
ISBN : 0552774391
¥1,177 (税込)
2位は村上春樹氏のベストセラー。『ノルウェイの森』の映画はシンガポールで4月に公開されたばかり。もともと海外で人気が高い小説ながら、映画公開でさらに火がついたそうです。
僕は一九六九年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。
限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
3位は『自己評価の心理学』の共著などで知られるフランスの心理学者ルロールが手がけた寓話仕立ての小説。フランスでベストセラーになり、今後映画化予定。
Hector and the Search for Happiness : A Novel
Lelord, Francois/ Garcia, Lorenza (TRN) / Penguin Group USA
2010/08出版
ISBN : 0143118390
¥1,309 (税込)
――さらに、シンガポールならではのおすすめジャンルはありますか?
リムさん 「国際色豊かな土地柄を反映して英語圏・シンガポール系の作家はもちろん、中国系、インド系作家の小説も好まれるようです。それに最近は色々な国の小説がどんどん英訳されてるので、幅も広がってきました。世界文学が手に取りやすくなりました。」
なんだか少し、エキゾチックな響き。世界文学と言われて頭にすぐ浮かぶのはフランスやドイツですが、世界はもっと広いはず! 南国シンガポールではどんな世界文学が流行っているのでしょう?
というわけで、リムさんおすすめの 《シンガポール本店 英訳された世界文学ランキング》 をどうぞ。
《シンガポール本店 英訳された世界文学ランキング》
1位は、イタリアの新人作家パオロ・ジョルダーノによる小説『素数たちの孤独』。
「深刻になりすぎない恋愛ドラマ小説で、男女ともに人気があって一位に!」とリムさん。
Giordano, Paolo / Penguin Group USA
2011/03出版
ISBN : 0143118595
¥1,403 (税込)
2位は、中国系の作家による新作は、文化革命を背景にした歴史小説。Pearl(真珠)は、「大地」の作者パール・バックのことだそうです。
Min, Anchee / Bloomsbury Publishing Plc
2011/05出版
ISBN : 1408809796
¥1,177 (税込)
3位もやはり!中国から。的確に女性心理を捉えることで定評がある男性作家だとか。しかし中国の小説はどんどん英訳されるんですね...
4位は15カ国が翻訳権を獲得、なんとアメリカのニューヨークタイムズ紙でベストセラーリストに載った小説!
「シンガポールでも人気があり、一目置かれる韓国の作家です。」
Please Look after Mother -- Hardback
Shin, Kyung-sook / Orion Publishing Co
2011/04出版
ISBN : 0297860739
¥2,340 (税込)
5位は、「Man Asian Award 2008を受賞したフィリピンの作家。文学賞ものは注目されやすいです!」
父親がアロヨ政権の政治家という家系の著者です。
6位はまた中国の作家さんの登場です。
7位はピューリッツァー賞にノミネートされた事もある韓国系米国人作家、チャンネ・リーさんの小説。
プリンストン大学で創作を教えたこともあるリー氏は英語で執筆するそうなので、正確にいえば「英訳」ではありません。
カズオ・イシグロさんが日系だけれどイギリス人作家であるのと同じですね。
8位はシンガポール在住の作家、Shamini Flintさんの犯罪小説最新作。元弁護士でいまは二人の子供を育てる傍ら、執筆や環境保護活動もこなすキャリアウーマン。
A Deadly Cambodian Crime Spree (Inspector Singh Investigates)
Flint, Shamini / Piatkus Books
2013/05出版
ISBN : 0749953470
¥1,325 (税込)
9位でようやくまたヨーロッパの本が登場。「童話っぽい作風を好きなお客様が多く、その層にマッチする一冊です」とリムさん。
Drakulic, Slavenka / Penguin Group USA
2011/02出版
ISBN : 0143118633
¥1,309 (税込)
そして10位は地元シンガポールで良く知られた人気作家 Catherine Limさんの新作。
Miss Seetoh in the World -- Paperback
Lim, Catherine / Marshall Cavendish International (Asia) Pte Ltd
2012/01出版
ISBN : 9814328367
¥1,964 (税込)
このランキングを見ると、中国系作家の躍進がめざましいことにまず気づきます。文化的な影響力と経済力には関連が...と簡単に考えてよいか分かりませんが、中国文化に興味を寄せる人が世界中で増えるにつれ、欧米の出版社が需要に応えて中国系作家の英訳に力を入れていることは大いに考えられます。一方、韓国やインド、シンガポールの作品にも強い人気があり、英訳されることで国内外の読者に広く知られるチャンスができたようです。
ランキングに入った本の多くでは、主人公がアメリカなどの外国に住んでいる設定になっており、外から見た母国という視点が演出されていることにも、グローバルな時代の世界文学を実感した今回の調査でした。
ちなみに、今回は日本人以外の作家にあえて絞ったランキングでしたが、日本人による文学作品トップは村上春樹さんでした。海外で圧倒的な人気を誇る村上ワールドに続いて、わたしたちが親しんでいる本がどんどん英訳されて、日本から世界の読者に届けられるチャンスが増えるといいですね。
(編集部 角モナ)





