はじめての辞典 ~ あなたならどう選ぶ?小学国語辞典
すべての学力のベースになるのが国語で、それが大事であることはもちろんのこと、「辞典をひく」という行為で身につく「調べる力」も馬鹿になりません。だからこそ初めて手に取る辞典は、子どもたちが楽しみながら多くを学べるものであって欲しいのです。
今回の特集では、『三省堂国語辞典』の編集委員として辞書作りにたずさわるとともに、日本語や文章についての著書も多い飯間浩明さんに売れ筋の小学国語辞典をとりあげて頂き、その特徴と選びかたのポイントについてコメントを頂きました。
今年は学習指導要領が改訂され、各社の小学国語辞典が新しくなっています。さまざまな工夫が凝らされたたくさんの辞典を見比べ、子どもたちに合った辞典を選んでみてください。
(編集部 簗瀬)
-------
小学国語辞典の選びかた (日本語学者・国語辞典編纂者・飯間 浩明さん)
国語辞典は、ことばを大量に習得しつつある子どもにとって、大切な相談相手となります。初めて使う国語辞典(小学国語辞典)をどう選ぶかということは、なかなか大きな問題です。簡単に3つのポイントを挙げておきます。
第1のポイントは、なあんだ、と思われるかもしれませんが、辞書との出会いを大事にするということです。現在の小学国語辞典は、どれも一定水準には達しています。したがって、たまたま子どもが書店で見て気に入ったとか、あるいは、親族からプレゼントされたとかいった辞書があれば、安心して使ってかまいません。「その辞書はやめておこう」などと、水を差さないことです。
第2のポイントは、できれば、多様な辞書を選ぶということです。小学国語辞典が一定水準にあるということは、必ずしも、どの辞書の記述も似たり寄ったりだ、ということではありません。ひとつのことばの説明でも、辞書ごとに個性があります。きょうだいや友だち同士で別々の辞書を使い、折に触れて見せ合ったりすることで、違いに気づくことも重要です。
第3のポイントは、自分にとって必要なことばが載っているものを選ぶということです。辞書を比べるとき、ことさら語数に注目する人がいます。でも、数千語の違いは、実はあまり問題になりません。肝心なのは、項目が吟味されているか(必要な語が載っているか、また、不必要な語がきちんとカットされているか)、ということです。最近聞いて分からなかったことばや、自分の好きなことばを10語ぐらいメモしておき、そのことばが載っているかどうか、店頭で確認してみることを勧めます。
それでも、選択に迷ったら?
そのときは、以下の個別の解説を参考にしてください。
おすすめの辞典
1.「要するにどういうことか」がわかる ― 三省堂 例解小学国語辞典 第五版
総ルビ・ビニールカバーで、今回紹介する辞書の中では最も軽量です。小学国語辞典のさきがけとなった石黒修編『小学国語辞典』以来、50年以上の蓄積を持ち、内容に安定感があります。「煎じ詰めると」など、実際に使われる語形を見出しに立てているのは、たいへんよいくふうです(一般の辞書では「煎じ詰める」)。ことばの説明は、簡潔に要点を押さえ、「要するにどういうことか」がすっきりと分かります。同音語の見出しにアクセントを示しているのも特長です。
軽くて扱いやすい専用用紙で抜群の軽さを実現。
すべての漢字にふりがなをつけ、豊富なイラスト、わかりやすいコラムが特徴です。
(B6判)
(A5判)
2.「何年生で学ぶ漢字か」がわかる ― 例解学習国語辞典 第九版(小学館)
これも小学国語辞典のしにせのひとつ。現行版で総ルビ・4色刷りビニールカバーになりました。見出しの漢字すべてに配当学年(何年生で学ぶか)の数字を振ってあるのは親切だし、役に立ちます。漢字表記も、「あい色」(交ぜ書き)・「藍色」(全部漢字)の2通りを示すなど、こだわりが見られます。「くり下げる」に「くり下がる」「くり下げ」など関連語を記しているのは、語彙を増やす助けになります。固有名詞や外来語などを除き、アクセントを示しています。
(B6判)
(A5判)
ドラえもんと一緒に、ことばの海にこぎ出してみませんか。
(B6判)
3.子ども向けの辞書らしい編集 ― 学研 新レインボー小学国語辞典 改訂第四版
総ルビ・ビニールカバー。旧版はずっしりと重かったのが、第四版では、増ページにもかかわらず軽くなりました。新語や百科項目(百科事典的な項目)を取り入れるのに積極的な辞書のひとつです。たとえば、「デバッグ」(プログラムの誤りを直す)が載っているのは、コンピューター好きの子どもにとってはうれしいはず。トランプの「ばば抜き」(他の小学国語辞典に見当たらない)を、5行にわたってくわしく説明しているのも、子ども向けの辞書らしい編集です。
(B6判)
(A5判)
4.見出しの文字など特徴的なデザイン ― チャレンジ小学国語辞典 第五版(ベネッセ)
総ルビ・ビニールカバー。比較的後発の辞書だったということもあって、他の辞書の長所を研究した跡が見られます。旧版では、いささか語数が少なかったのですが、第5版では増補して3万語を超え、他の主要辞書に並びました。「クリーン」のほかに「クリーンエネルギー」「クリーンエネルギー車」まで見出しに立てているのは、小型辞書としては細かく、一種の冒険でしょうか。見出しの文字を、教科書体でなく太いゴシック系の書体にするなど、独特のデザインにしています。
初版刊行以来25年でつちかったノウハウを生かし、ベネッセが子どもの目線で編集しました。
カラー版学年別漢字ポスターつき。
(B6判)
(A5判)
5.動詞の活用形がわかる ― 旺文社小学国語新辞典 第四版
旧版はページ数の割に重く、紙の表紙で、総ルビでないなどの点で、かなり損をしていました。第四版はこれらの点がすべてクリアされて、読みやすく親しみやすい辞書に脱皮しました。辞書は装丁やレイアウトも大事だ、ということが分かります。主要な動詞に「歩かナイ・歩きマス......歩け!・歩こウ」など、活用形をすべて記したり、「文化」の末尾に「culture(カるチャ)」と英語を記したりしています。「古池や蛙飛びこむ水の音」など、詩歌の文句が引けるのも、この出版社の辞書らしい特色です。
大きな見出し語/漢字にはふりがなつき。
ことわざ・慣用句も充実の31000語収録。
別冊「国語辞典の使い方」つき。
(B6判)
(A5判)
6.生き生きした用例 ― 下村式 小学学習国語辞典 第2版(偕成社)
総ルビ。表紙は紙ですが、丈夫になった感じ。小学国語辞典の中では個性派の部類です。漢字の項目をイラストのマークでグループ分けしたところなどに創意が見られます(ただ、マークの意味の説明はやや不親切です)。「怠(だる)い」「雲脂(ふけ)」など、他辞書ではかな書きになっていることばにも、できるだけ漢字を示しています。用例が生き生きしているのもいいところで、たとえば、「哀願」は「二度といたずらはしませんからゆるしてくださいと哀願する」。思わず笑ってしまいます。
厳選した見出し語を約25,000語収録。
ひらがな・カタカナの書き順も唱えて学習。
-------
さらに詳しく国語辞典の選び方を知りたい方へ
国語辞典の深い世界をさらに知りたい方は、今回、コメントを頂いた飯間浩明さんの以下のサイトをご覧ください。
(以下のような内容が掲載されています)
第0回 はじめに―国語辞典の選び方
第1回 自分の国語辞典がなかったころ―いろいろな国語辞典
第2回 実用辞典は役に立つ―国語辞典と実用辞典
第3回 初めて買った国語辞典―旧仮名遣いがわかる辞典
第4回 語数の多い国語辞典がほしい!―辞典選びは収録語数が決め手?
第5回 語数が多ければ載っている?―辞書の収録語数
(以降、2011年5月現在で第32回まで掲載)
飯間さんの著書紹介
「いや、そもそも、ことばから誤解が生まれるのは避けられない」と飯間先生。
でも、ことばのメカニズムを知っておけば、何とかしのげる場面もあるはず。豊富な実例に基づきながら、ことばの誤解について考えてみましょう。
文章のセンスは、楽しみながらつけていきましょう。特定の音を使わずに書いてみる、ツイッターなどを想定して字数を制限して書いてみる......ゲーム感覚で書いているうちに、推敲のしかた、書き方の型が身につきます。
でも、これがなかなか難しい!
この本では、「問題・結論・理由」というとてもシンプルな型で、誰にでも伝わる、そして誰にでもできるようになる論理的な文章の書き方が示されています。
1冊のなかに、いろいろな題材を取り上げ、この型で実践。読み進めるうちに、自分の書き方が変わってきます。



















