本当は役に立つ文学ガイド - 新宿本店「文学博覧会2011(ぶんぱく'11)」の歩き方
ただいま紀伊國屋書店新宿本店で開催中のブックフェア「文学博覧会2011」略して「ぶんぱく'11」が好評です。「ぶんぱく」では、約600点の文学作品全てに、"実際に読んだ本しか販売しない" 体育会系文学好き有志「紀伊國屋書店ピクウィック・クラブ」によるコメントつき。そして、今回は文学作品を「パビリオン」ごとに展示。249の文学作品にそれぞれキーワードが設定され40のパビリオンに展示されています。
■開催期間: 2011年4月1日~5月31日■開催場所: 紀伊國屋書店 新宿本店2階催事場
■企画: 紀伊國屋書店ピクウィック・クラブ博覧会の様子はピクウィック・クラブのTwitter公式アカウント(@pickwick_club)でもご覧になれます。
みなさまのご来店を、心よりお待ちしております。
さて話は変わりますが、文学って何が面白いのでしょうか。自他ともに認める無類の文学好き「ピクウィック・クラブ」がおくる「文学博覧会」。お陰さまで文学好きの方たちにはご好評いただいておりますが、「文学」と聴いただけで眠気を催してしまう方、そうでなくとも忙しい毎日に日々追われていると「なかなかゆっくり文学なんて...」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、文学ファンからのお叱りは覚悟の上で、あえて「文学」の実用的な使い道、知られざる効能を、開催中の「ぶんぱく」の各パビリオンから3冊ずつ、ピクウィック・クラブの紹介コメントつきで挙げながら、ご紹介したいと思います。
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Q1.旅行に行きたくてもお金がありません。
A1.文学ならお金がなくても異世界へ旅立てます。
この記事を執筆しているのは2011年の5月2日、GWの真っ只中。日本では長期休暇の前後になると、そこかしこで繰り広げられる
「ゴールデンウィークはどこかに行くんですか?」
「ええ、ちょっとハワイまで」
という会話。
旅行、いいですよね。ハワイでもドバイでも行きたいものですが、現代の旅行にはそれなりにお金が必要です。先立つモノがないから今年は我慢...という方も多いのではないでしょうか。
そこで、そんなかたにオススメしたいのが文学旅行。本なら安ければ500円程度、高くても数千円もあれば、異世界に旅立つことができてしまいます。「異空間」パビリオンでは、インドの夜や「山」、「天竺」をはじめとして「天上界」、「彼岸」などのキーワードがならびます。普通なら一度行ったら二度と帰れなくなる秘境にも、気軽に出入りできてしまうところも、見逃せません。
「夜熟睡しない人間は多かれ少なかれ罪を犯している。彼らは何をするのか。夜を現存させているのだ」
異空間にはたいてい異生物が潜んでいます。バクが最高。ペットにはしたくないけど
飛び抜けて異才を放つ中篇『モンテ・ヴェリテ』。これを読むと海よりも山が恐ろしくなってきます。
珍獣ハンターには「UMA」パビリオン
旅の醍醐味のといえば「未知との遭遇」。現地の人々とのふれあいや野生の生態系に触れる体験は新鮮で、日常を忘れさせてくれるものです。珍獣ハンターもビックリの「UMA」パビリオンでは、「夢喰い虫」、「人魚」、「死神」といった著名なUMAたちからスーパー猫、正体不明の「オドラデク」まで、この世ではなかなかお目にかかれない珍獣たちがあなたを待っています。
脚、脚、脚、脚、脚......
美しき狂気。夢食い虫って、虫なのかな。バクなのかな。混乱中。
よくテレビで「人魚のミイラです!」としわしわな何者かの映像を見るけど、こっちの
人魚はもっと美しく、切ないよ。
IQ160の天才猫なら、いつか人間になれるはず...!!
スーパー猫、ガミッチが活躍する連作短編+完成度の高い中編多数収録。
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Q2.青春が灰色すぎてがっかりです。
A2.「青春」パビリオンの作品群で、青春やり直しましょう。
人には誰しも子供時代があり、青春時代が訪れます。でも残念なことには、青春はいつもキラキラと輝いているとは限らず、かといってドラマティックな苦難に満ちているとも限りません。でも文学なら、いつでも何度でも、青春をやり直すことができるというわけです。「青春」パビリオンに並ぶ作品のキーワードは「衝動」「憎悪」「夏」「二十歳」「キス」「オナニスト」。キーワード「憎悪」を冠す中2病必読の『フリッカー式』、天がおちてくるほどの「キス」が描かれる『苦悩の始まり』など、現実にも劣らないほどむず痒く、狂おしい青春が押し寄せてきます。
いくら脱線させても、またそこには道があり、
その道を進めばそれは脱線ではなくなる。
でも、この抑えがたい衝動はとことんそれを繰り返す。脱線した先を知るために。
こんな風にしか生きられなかった僕らの青春がチープに爆発する。
すべてに「ノン!」と言え。灼けつくように生きろ。
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Q3. 彼女いない歴=実年齢のぼくですが、もうすぐモテキがやってくる気がします。でも恋がご無沙汰過ぎて、なんだか怖いんです。
A3.「恋愛」パビリオンでキケンな恋のシュミレーションを、どうぞ。
恋はご無沙汰していると人生が味気なく思えてきたりもするものですが、かといって多すぎても大変。いくつもの恋が同時に進行しようものなら、全ての恋人を失うばかりか、財産、友人まで失う危機にもなりかねません。
「恋愛」パビリオンで待つ恋は「片想い」「身分違い」「交換条件」「ゲイ」「レズビアン」「幼児愛」。色々な恋を試してみたいけど勇気が出ない、という方も、「最近出会いがない...」とお嘆きの方も、文学で叶わぬ恋、危ない恋を心ゆくまで体験することができます。
コレラの時代の愛 Obras de Garci´a Ma´rquez
ガブリエル・ガルシア・マルケス、木村栄一 / 新潮社
2006/10出版
ISBN : 4105090143
¥3,150 (税込)
巨匠が圧倒的なスケールで描く恋愛譚。「百年の孤独」と同じ密度でラブストーリーを描いたらどうなるか?
アメリカ大統領トマス・ジェファソンと黒人奴隷サリー。サリーが愛か自由かの二者択一に引き裂かれる時、世界もまた2つに分かれた。
愛によって世界が、歴史が変わる。それがエリクソン。ぜひ一度体験を。
仏領インドシナを舞台に、ある濃密な恋の物語が、マジックリアリズム的な筆致で展開する。意識と風景と幻想が融け合う。
「恋よりエロス」なら「エロス」パビリオン
「恋よりエロスだ!」と叫んで刹那的な生を燃やすなら、まっしぐらに「エロス」パビリオンに向いましょう。「妄想」「乳」といった定番エロからキーワード「鞭」、「マゾヒズム」の語源、マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』「サディズム」のサド『悪徳の栄え』、果ては「死のエロス」を描く『眠れる美女』や『ネクロフィリア』まで、エロ初心者から達人まで、みんなが楽しめるキーワードが並びます。
何事もそう。恋もエロも。
夜が明けるとともに見えてくる仮面の裏の素顔に愕然とする。
元祖ファム・ファタールの踊りが、王宮に恍惚と血をもたらす。デカダンス文学の代名詞。ビアズリーの挿絵と一緒にひたってください。
すいません。キーワードも表紙からとっちゃいました。この本の下には同社の『ヴァギナ』を置くといいと思います。
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Q4. 大人になりたくない...。
A4.「クソガキ」パビリオンで、子供心をたっぷり充填してください。
大人だって「いつも冷静であろう」「正しい判断をしよう」なんて思って日々を送っていると、知らず知らずのうちにストレスがたまっているもの。時々ふっと、大声をあげて野原を駆け巡りたい衝動に駆られたり、しませんか?
「クソガキ」パビリオンは「オスカル」「アリス」「ザジ」「ベン」「ペテール」「三郎」が集まるクソガキオールスターズ。いまにも手のつけられない惨劇が持ち上がりそうです。
とにかく口が悪い女の子である。でもなんか好きになっちゃうのは、たぶん実際そばにいないから。
最初のうちは、誘拐されてしまってかわいそうなペテール...。だったけど、ラストであっという間にクソガキに大変身。
又三郎のあとには風が吹く。時に風が悪さをするように大人には意地悪な又三郎。子どもの味方、風の又三郎。
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Q5. 醜い世の中にウンザリです。
A5.「美学」パビリオンで、この世の中を豊かに生きる想像力を。
世の中、美しいものばかりではなく、ウンザリすることもしばしば。すべてのものを「凝縮」する美学、さまざまのものを「コラージュ」のように集める美学、「奇想」「騙り」「残酷」...「美学」パビリオンの凄まじい想像力に学ぶことが多そうです。
世界のすべてを詰めこんだような、ボルヘスの詩文集。
道路地図が語る一人称小説をはじめ、恐ろしい奇想がてんこもり。取扱注意。
震えるような「語り=騙り」の美学。
「植物」パビリオンで、とうとう人間脱出
とはいえ、いかなる美学をもってしてもこの世は生きづらいのが現実です。「もう人間はやめて植物になりたい...」という境地に達したあなたは「植物」パビリオンで、一度、人間という軛から解き放たれるのも良いかもしれません。
これらすべてが一輪のチューリップに込められている。
不可能と言われた黒いチューリップは暗く血で濡れた時代に作られた。
ここに奇跡の出番はない。
「苔文学」というものがあるのをご存知でしょうか。
その頂点に燦然と輝くのがこの小説でございます。
はるか未来で繰りひろげられる、人間の世界ではない世界の日常。
命の扱いが軽い。
以上でご紹介した以外でも、「ぶんぱく'11」では、「音楽」「酒」「水族館」「スポーツ」「ボーイ」「ガール」「都市」「欲望」「奇人」...と、気になるパビリオンがまだまだ目白押し。加えて、故・生田耕作氏が設立した 「奢灞都館」 の書籍を現在可能な限り全作品集めた特別パビリオン、日本文学と海外文学の名作を集めた 「日本文学博覧会」 、「海外文学博覧会」 もご用意。この記事でご紹介したパビリオンも、掲載できた作品は半分程度。タイトルやパビリオンに並んだキーワードをながめるだけで、文学好きならずとも思わず息を飲む圧巻のラインナップです。ぜひ、会場まで足をお運びください!
※「ぶんぱく'11」の全40パビリオン、「日本文学博覧会」 、「海外文学博覧会」の全タイトルを掲載したリーフレットをPDFで公開中です。
「40パビリオン」リーフレットファイルをダウンロード
「海外文学博覧会・日本文学博覧会」リーフレットファイルをダウンロード
取材協力 紀伊國屋書店ピクウィック・クラブ 木村・梅崎・小木曽・田川・藤本
(編集部 須賀喬巳)





























