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東海大学文学部に文芸創作学科が創設されたのは、二〇〇一年四月のことだ。同文学部の十一学科十四専攻のうちの一番の新参者ということになる。
文芸創作学科発足の端緒は、一九九一年、作家の 原登氏が同学部日本文学科で授業を持った時に遡ることができる。氏は、受け持った「言語芸術学特講」という科目に「創作ワークショップ」という副題をつけていたが、この副題は、やがて文芸創作学科で「卒業制作」(卒業論文にあたる)を行う授業の科目名になるだろう。 原氏は、氏を東海大学に招いた大学の当局者と、当時から、アメリカの大学にあるような創作コースをつくることができないかと話をしていた。
私が 原氏に招かれて授業を持つようになったのは一九九五年。 原氏からは「やがては創作コースを」と聞かされていたが、語る方も聞く方も、所詮は夢物語かなあと思いつつ、それでも、非常勤の立場で学生と作品集を作ったり、付属校の生徒のための創作講座を開いたりと、後から考えてみれば開墾作業のようなことをやっていたのだった。
実現へと動き出したのは、一九九九年のことだ。二〇〇一年度に設定された文学部改組への動きの中で、 原氏の尽力や、 原氏と私とで行って来た活動がピックアップされ、一気に学科創設への気運が高まったのである。もちろん大学上層部の決断や、多くの関係者の努力なしには、実現に向かうことはあり得なかったのだが。さらに、学科のカリキュラム作成、講師の人選、文部省への認可申請書類作成などを 原氏と私に任せたことは、学科発足の決定と同様の勇気ある決断だったと言えるかもしれない。
学科創設の準備を任されたため、私たちには長い重労働の時間が降りかかって来た。同時に、一から学科を作っていくという希有の経験をすることもできた(実際の作業には、幾人もの先生や事務方の助力が不可欠だった)。ここに載せた当学科二〇〇一年度カリキュラムは、当時、いかにもお役所的な「規制」と「許認可」の壁に突き当たりながら作成したものである。同カリキュラムは、この四月から二〇〇五年度カリキュラムに更新されるが、変更部分は小さい。
学科のコンセプトの基本は、創作を基盤にして文学について教える、ということだ。大学での文学教育が、多くの場合、文学研究の立場から行われて来たのに対し、実作者として、創作という観点からできることがないか、というのが 原氏や私の考える「創作コース」の原点だったのである。その考えが学科の内容にも反映している。そんなわけで、当学科は創作を直接指導することを眼目とはしていない。しかし、全ては創作へとつながっている。実作者が中心となって学科をつくるというのは異例のケースだろうが、だからといって実作をカリキュラムの中心に置いたわけではなかったのである。
実際、学科の中で私が一番実作よりの授業をしているはずだが、それでも、学生に、こう書け、ここを直せ、などという指導はしない。合評を行って、私「も」意見を述べるというのが基本的なスタンスだ。学科として行っているのは、小説や批評や詩の書き手として、学生を「文学」の大海に案内することだと考えている。浜辺に「文芸創作」の旗が立っている。遠くまで泳ぐか、深く潜るか、浜辺でピチャピチャやって終わるか、それは、最終的には、学生の判断ということになるだろう。ちなみに、この「海」に私たちは「文学のユニヴァース」という名前をつけていて、それが学科新入生向けの導入授業の科目名にもなっている。
この三月、最初の卒業生が旅立つ。第一期生は、成績の面を含め、よくやってくれたと思う。こんな名前の学科だから、だれもが就職を心配するだろうが、むしろ平均よりいいくらいだ。私のゼミでは、卒業制作で小説の実作を義務づけていて、そんな「卒論」では就職にさしさわる、と心配する人が学科の中にさえいたけれど、真剣に進路を考えていた私のゼミ生の多くはきちんと就職先や進学先を決めてきた。
恐らく、この学科、この先生は何にも助けてくれないから、自分がしっかりしなくてはと自立するようになったのだろう。肝心の卒業制作の小説がどういう出来だったかというと、学生たちはえらく巧妙なものを書き上げた。うまくなるように指導した覚えはない。私は、むしろ書きにくくなるようなアドバイスばかりしていた気がする。
学生はともかく、学科としてはどうだろうか? 四年目のカリキュラム改訂が最小限ですんだのは、最初のコンセプトがおおむね正しかったからだと私は考えている。ただ、時代の進みゆきはあまりに速い。将来の学科の様相は、私の想像の外にあるという気さえする。それでも、学科の大元の原則は変える必要がないはずだと信じている。
東海大学文学部文芸創作学科の主専攻科目(抜粋)
文学のユニヴァース/文学の遠近法(創作のための文学史)/文芸批評入門/映画史入門/世界の文学を読む/日本の古典を読む/現代文学の展望/批評の役割/外国文学の探求/パーソナルコンピュータと文学/現代小説論/詩論と作品/翻訳文学論/文学とセクシュアリティ/現代映画論/演劇入門/戯曲・シナリオ論/エッセイを読む・書く/編集の実務と出版/俳句を読む・つくる/創作演習/創作ワークショップ
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