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ライターズワークショップヘようこそ〜創作の技法・学習法
対談 小説との格闘、そこから発する熱を、何よりも伝えたい

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■何を学生に伝えるのか

青山 早稲田の教授陣では星野智幸さん、三田誠広さん、北村薫さんが現役の作家として創作指導を担当しています。辺見庸さんもいらしたのですが、学生とつきあってお酒を飲んだり、熱心に授業をやりすぎたので倒れてしまわれ、契約期間の半分でお辞めになりました。皆さんそれなりに工夫して勝手にやっているようです。毎年百人が文芸科にくるのですが、創作演習が受けられるのは、二、三十人くらいだと思います。何曜日の何時限目に学生が書いた小説を見るというよりも、できあがった時に見るというように、先生の自由裁量の余地を大きくしています。実際に小説家の方に見ていただいているので、そういうシステムだと少しでも時間の自由が利くということもあります。

新井 僕も二○○四年の一年間、日芸で教えていました。一年間だったらやれるかもしれないと、クリエイティブ・ライティングというゼミを持って、毎回書かせて、添削をしました。ゲストを呼んでインタビューの現場も見せました。それをどう原稿に起こすかを実践して、学生にもインタビューさせて、書かせました。フィクションだけではなくて、ノンフィクションも対象にしたかったので、それはいろいろな人を呼びました。作家、カメラマン、漫画家、俳優、冒険家、一年間で二十三人くらい。僕は楽しんでやっていましたが、学生から来たメールの内容から、彼らにとっても面白かったようです。こういう授業を待っていたと言ってくれて、ホッとしました。

青山 早稲田でも、ある先生は、なるたけ毎回ゲストとして作家を呼んでらっしゃるようですが、大学側からは講師料もなかなか出ないという状態です。T・コラゲッサン・ボイルが創作科で学ぶことは「生身の小説家に会えるということだけでも価値がある」と書いていました。彼はジョン・アーヴィングにアイオワ大学で教わっているのですが、「なにも教えてもらわなかった。ただいつも、授業に来ると、昨日遅くまで小説を書いていた、そんな話ばかりで授業にはならないのだけど、目の前に小説と格闘している人がいるのだということが、衝撃だった」と回想しています。一時間くらいしか授業をしないのでしょうが、その間ずっと小説が書けないとだけ言い続ける人がいることに驚いたそうです。

新井 貴重な時間だな。

青山 ボイルは今は、南カリフォルニア大学で教えています。どうやっているのと聞くと、同じことをやっていると言っていました。ひたすら「書けない」と言っているそうです(笑)。客観的にいうと楽な講義に見えるけど、ひと言、ひと言出てくるライブの実体験報告は、実際に学生にとっては刺激になるかもしれません。

新井 渡辺一夫さんが東大の仏文科にいらしたころ、彼はサロン的な場をつくって、そこから大江健三郎が出てきた。京大でいえば吉川幸次郎さんの中国文学から高橋和巳が出てくる。もちろんそこは創作科ではないし、渡辺さんも吉川さんも研究者だったわけですが、おそらくそこで、大江さんも高橋さんも創作にかかわるなにかを学んだと思うのです。

  時代や環境によっても異なりますが、なにを教えるかというのは、時間をかけて相当真剣に考えなくてはならない。学生の論文を、どう伸ばすかという観点から、ひとつずつチェックして、それを返すというのは、僕も一年やってみて気が遠くなるくらいの体験でした。青山さんが言われたように創作科が「熱を与える場」である以上、それに相応するものを大学側もきっちりケアするというのは、先生に対しても、学生に対してもすごく大切だと思います。

  学生が発表したものが、商業雑誌のように一般の人の眼に触れるというところまでケアしてあげると、学生も目標を定めやすいのではないでしょうか。もう少し言わせてもらうと、大学自身が商業雑誌と組む。それによって、ちゃんとした印刷媒体として学生に還元されるといい。実際にコロンビア大学の創作科は、それをやっているからいい作家が出てくる。



■結局基本はいい本を教えること

青山 アメリカの大学の創作科全般に対して、小説の書き方は大学で教えられるものではないとか、本を読むのが基本だとか、批判的なことを言っている人がたくさんいます。その中の一人である、ウイリアム・ギャスという小説家が、的確な批判をしています。

つまり、今大学の創作科に来ている人たちは、そのほとんどが小説を書きたいのではなくて、一山当てたい連中に過ぎないというのです。そういう面もたしかにあると思います。日本で創作科があちこちでできてきたのも、一山あてたい人が少しずつ増えてきているからだとも思います。

最近の日本文学の傾向としても、日本の出版界の傾向としても、小説の世界の傾向としても、文学賞の選び方を見ていても、そういうところが強いような気はしますから。創作科に来る学生にも、ほとんど本を読んでいない者が多い。そこで教師がいい本を読ませる。どんどん読ませる。そこからはじめなければならない。

新井 私も創作科には、まずいい本を読ませるという環境づくりが必要だと思います。世の中にはいい小説があるのだということを、教えてあげる。もしかしたらそれだけで十分かもしれない。

青山 結局そこに戻るのですね。そう、それが一番大事です。


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■ライターズワークショップ(Writers’ Workshop)とは?

 大学、大学院他の教育機関における、ズバリ、プロの書き手を養成するためのカリキュラム体系。国際的に最も著名なのが、1897年に開講した、アメリカ・アイオワ大学の創作科(Creative Writing Program)。毎年多くの名だたる作家たちが特別講師として同学を訪れて文筆を志す学生の指導にあたっており、テネシー・ウィリアムズやレイモンド・カーヴァー他、現代アメリカを代表する作家を輩出している。

最近では、日本でも大ヒットした映画「めぐりあう時間たち」(“The Hours”)の原作者であるマイケル・カニンガムも同学出身。カニンガムを含め、同学はこれまでに12人のピューリツァー賞作家を世に送り出している。まさにライターズワークショップの代名詞。一方、ニューヨークのコロンビア大学創作科も、過去にJ・D・サリンジャーをはじめとする作家を送り出してきたが、殊に1980年代以降、モナ・シンプソンら若手ベストセラー作家を数多く出し、あらためてその存在感を示している。いずれの大学も、「小説」だけではなく、「ノンフィクション」や「詩」「戯曲」「映画脚本」といった個々の創作志向に応じた包括的なカリキュラムを擁している。また、産業界との連携も強く、卒業後の“アフターケア”も充実している。

  我国では、専門の科を設けてこうしたカリキュラムを組む大学は稀であったが、日本大学や早稲田大学など、「芸術学部」あるいは「文学部」の枠組で、以前よりプロの書き手を養成するカリキュラムを組んできた大学はいくつかあり、この中から巣立った作家も多い。近年では、東海大学文学部など「文芸創作学科」を設けて本格的に実践教育を行う大学や、近畿大学文芸学部など現役の作家を講師陣に据えて創作演習を行う大学も増えてきている。

■「文芸創作」を教える主な大学

《アメリカ》

アイオワ大学
(アメリカ・アイオワ州) 
  主な教授陣:
イーサン・ケイニン、フランク・コンロイ、ジェームズ・A・マクファースン
  主な卒業生(受講生):
ジョン・アーヴィング、倉橋由美子、三浦清宏

ジョンズ・ホプキンス大学
(アメリカ・メリーランド州)
  主な教授陣:
アリス・マクダーモット、スティーヴン・ディクソン

コロンビア大学
(アメリカ・ニューヨーク州)  
  主な卒業生:
J・D・サリンジャー、リチャード・イエーツ

《国内》

日本大学藝術学部文芸学科
(東京都練馬区)
 
早稲田大学文学部文芸専修
(東京都新宿区)
 
近畿大学文芸学部
(大阪府東大阪市)

東海大学文学部文芸創作学科
(神奈川県平塚市)

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