| 【東京裁判−判決から60年 これまでの成果と新たな動向】 (No.231 2008.11.11配信号) |
1948(昭和23)年11月12日、極東国際軍事裁判(通称「東京裁判」)の判決が下りました。今年でちょうど60年、東京裁判を記憶する人々は少なくなりました。しかし、ここ十年余り法曹界においては、同裁判を国際人道法発展史と関連づけて再評価する動きがあり、旧ユーゴ国際法廷等では、東京判決がニュルンベルクに並ぶ「重要な歴史的先例」として注目されるようになりました。新しい視点からの裁判論を試みた研究書も、世界各国で続々と出版されています。 本特集では、今夏『東京裁判』(みすず書房)を刊行したハワイ大学歴史学部助教授・戸谷由麻氏の提案と構成のもと、日本・英語圏から近年刊行された書物を選び、変わりゆく東京裁判研究の動向をたどります。本特集の紹介文は戸谷由麻氏によるものです。 |
東京裁判―第二次大戦後の法と正義の追求 | ||
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戸谷由麻【著】 2008/08 (みすず書房) 標準価格:税込\5,460 ISBN:9784622074069 | ||
戸谷由麻(とたにゆま) 東京生まれ。2005年カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得(歴史学専攻)。ハーヴァード大学ライシャワー日本研究所のポストドクトラル・フェローを経て、ネヴァダ大学ラスベガス校の歴史学部助教授。2008年からハワイ大学マノア校の歴史学部助教授。 |
1.傍聴席から見た東京裁判 |
裁判研究を志す人々がまず始めに目を通しておきたいのは、速記録、判決書、書証などの公判記録です。しかし、これらの基本文献は数十万ページを超える膨大な資料で、十年、二十年かけてもなかなか読みこなせません。「とにかくまず、裁判の大きな流れを把握したい」と望まれる研究者も多くありましょう。 そこで、当時傍聴席から東京裁判を追っていた人々の回顧録が勧められます。この種の刊行物で一般に出回っているものは多岐にわたりますが、ここでは近年復刻されたものを中心に、俯瞰的な裁判像を提供してくれる著作をいくつか挙げてみます。 |
【1】 | 私の見た東京裁判〈上〉 (講談社学術文庫) | |
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冨士信夫【著】 1988/08 (講談社) 標準価格:税込\1,522 ISBN:9784061588417 |
私の見た東京裁判〈下〉 (講談社学術文庫) | ||
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冨士信夫【著】 1988/09 (講談社) 標準価格:税込\1,575 ISBN:9784061588424 |
★著者は元海軍少佐。第二復員省(旧海軍省)の指示下、法廷係として毎日公判の概要を傍聴席にて記録する任に当たった。 |
【2】 | 東京裁判〈上〉 (中公文庫) (改版) | |
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児島襄【著】 2007/03 (中央公論新社) 標準価格:税込\1,100 ISBN:9784122048379 |
東京裁判〈下〉 (中公文庫) (改版) | ||
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児島襄【著】 2007/03 (中央公論新社) 標準価格:税込\1,100 ISBN:9784122048386 |
★裁判当時、法廷に通いつめた一青年―のちに戦史家となる―児島譲氏による記録。関係者への取材を含んでいる。 |
【3】 | 秘録 東京裁判 (中公文庫BIBLIO20世紀) | |
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清瀬一郎【著】 2002/07 (中央公論新社) 標準価格:税込\899 ISBN:9784122040625 |
★東条英機被告の主任弁護人による回想録。弁護側の内部状況が垣間見られて興味深い。被告側の冒頭陳述も掲載。 |
【4】 | 東京裁判〈上〉 (朝日文庫) | |
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朝日新聞社 1995/08 (朝日新聞社) 標準価格:税込\651 ISBN:9784022611062 |
東京裁判〈下〉 (朝日文庫) | ||
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朝日新聞社 1995/08 (朝日新聞社) 標準価格:税込\651 ISBN:9784022611079 |
★開廷当初から裁判を傍聴した朝日新聞・法廷記者団による記録。開廷の初日から判決の日までの公判状況を細部にわたってたどり、説明を加えている。 |
【5】 | 東京裁判―もう一つのニュルンベルク | |
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ブラックマン,アーノルド・C.【著】〈Brackman,Arnold Charles〉 / 日暮吉延【訳】 1991/08 (時事通信社) 標準価格:税込\3,873 ISBN:9784788791275 |
★著者は裁判当時、UP通信社の特派員として東京裁判を取材した。のちに回顧録、The Other Nuremberg: The Untold Story of the Tokyo War Crimes Trials (New York: William Morrow and Company, Inc., 1987)を出版。以来、英語圏では数少ない東京裁判に関する概説書の一つとなる。日本語訳は鹿児島大学教授・日暮吉延氏。(本書は残念ながら、原書・訳書とも品切れ、再版未定となっております。) |
2.「パル反対意見書」とその波紋 |
戦後に裁判評価が形成されていくうえで中核となったのは、「パル判決書」で知られるインド代表判事ラーダビノード・パルによる個別反対意見書でした。パル判事はベンガル出身の法曹家。裁判後、1952年、1953年、1966年と三度にわたって来日し、パル反対意見書の重要性を日本人に印象づける大きな役割を果たしました。同反対意見書は、今日まで内外の戦争責任論に波紋を投じ続け、裁判研究でも避けて通れぬ書となっています。 裁判の回顧録と同様、パル関係の刊行物は多種ですが、ここではパル反対意見書全文と、昨年刊行されたパル伝記の二点をご紹介します。 |
【1】 | パル判決書 (講談社学術文庫) 共同研究 上 | |
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東京裁判研究会 1984/02 (講談社) 標準価格:税込\2,310 ISBN:9784061586239 |
パル判決書 (講談社学術文庫) 共同研究 下 | ||
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東京裁判研究会 1984/02 (講談社) 標準価格:税込\2,205 ISBN:9784061586246 |
★パル反対意見書全文訳を一般の読者層向けに刊行したもの。パル意見書についての六つの論考も含む。 |
【2】 | パ−ル判事―東京裁判批判と絶対平和主義 | |
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中島岳志 2007/08 (白水社) 標準価格:税込\1,890 ISBN:9784560031667 |
★東京裁判参加以前のパル判事、特に絶対平和主義を唱導する「思想家パル」像を、フィールドワークも交えて探った作品。 |
3. 「勝者の裁き」「文明の裁き」論の動向 |
東京裁判は、ニュルンベルク同様「勝者が敗者を裁く」という片務的な構造を抱えていたために、当初から「勝者の裁き」との批判を免れることができませんでした。また、ニュルンベルク・東京両法廷では、「文明の名に基づき」犯罪者を裁く、との論が検察側によって展開されました。しかし核爆弾を使用するなどした戦勝国が「文明人」を自称する資格があるのかという批判があり、そこから「文明の裁き」論も発展しました。これら二つ批判は、パル反対意見書の基調も成しており重要です。 戦後の研究者の中で、「勝者の裁き」「文明の裁き」論を分析した刊行物がいくつかあります。ここでは、そのうち最も重要と思われるものを三点、紹介しましょう。 |
【1】 | 東京裁判―勝者の裁き (新装版) | |
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マイニア,リチャード・H.【著】〈Minear,Richard H.〉 / 安藤仁介【訳】 1998/08 (福村出版) 標準価格:税込\2,100 ISBN:9784571310034 |
★1971年にアメリカで出版されて以来、英語圏では東京裁判論の「古典」とみなされてきた。ベトナム戦争期の知的潮流を反映し、ここに展開される「勝者の裁き」論は米国における日本研究者に影響を与え続けている。 原書は、Victors' Justice: The Tokyo War Crimes Trial (Paperback edition, University of Michigan Center for Japanese Studies, 2001) |
【2】 | 東京裁判から戦後責任の思想へ (第四版) | |
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大沼保昭【著】 1997/09 (東信堂) 標準価格:税込\3,360 ISBN:9784887132788 |
★著者の大沼保昭氏は、1975年に『戦争責任論序説―「平和に対する罪」の形成過程におけるイデオロギー性と拘束性』(東京大学出版会)を発表するなど、早くから裁判研究に取り組んできた草分け的人物。1983年の東京裁判国際シンポジウム開催でも指導的役割を果たした。著書は多いが、中でも本書は、東京裁判が戦争責任論争に及ぼした影響を考察しているうえで有用。 |
【3】 | 「文明の裁き」をこえて―対日戦犯裁判読解の試み (中公叢書) | |
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牛村圭【著】 2000/12 (中央公論新社) 標準価格:税込\1,995 ISBN:9784120030970 |
★本書は、公判記録を入念に分析しつつ「文明の裁き」論の展開を考察している。戦後日本の知的指導者となった丸山真男氏や、『ビルマの竪琴』の著者で知られる竹山道雄氏らの裁判観に着目するなどの特色から、米国の日本研究者の間でも注目された。(英訳:Beyond the “Judgment of Civilization.” Translated by Steven J. Ericson. LTCB International House of Japan, 2003.) |
4.八十年代に始まる研究とそのひろがり |
裁判研究は、八十年代に入って新たな様相を呈するようになりますが、中核となったのは立教大学の粟屋憲太郎氏でした。粟屋氏は、各国で公開されるようになった種々の裁判関係文書、特にアメリカの国立公文書館の資料を収集・編纂し、国内の研究者に利用できるようにした他、自らも新資料を利用し、新しい裁判論を次々と発表しました。粟屋氏による研究成果は、そののち日本国内だけでなく英語圏の現代日本史研究に影響を及ぼしました。粟屋研究の中でも、裁判参加国―特にアメリカ―の政治的利害を明らかにした点は、次世代の裁判研究者育成の方向づけとなり、注目されます。 ここでは、粟屋氏の代表的著作と、粟屋研究の流れを汲んでいるその他の研究を数例挙げてみましょう。 |
【1】 | 東京裁判論 | |
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粟屋憲太郎【著】 1989/07 (大月書店) 標準価格:税込\2,548 ISBN:9784272520190 |
★東京裁判研究に関心のある者にとっては必読の書。戦後世代の裁判論の指針となった。 |
【2】 | 東京裁判への道〈上〉 (講談社選書メチエ) | |
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粟屋憲太郎【著】 2006/07 (講談社) 標準価格:税込\1,680 ISBN:9784062583671 |
東京裁判への道〈下〉 (講談社選書メチエ) | ||
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粟屋憲太郎【著】 2006/08 (講談社) 標準価格:税込\1,575 ISBN:9784062583688 |
★かつて「東京裁判への道」と題して『朝日ジャーナル』に連載された26回に及ぶ論文(1984−1985年)を編集して刊行。上記の『東京裁判論』同様、裁判研究の方向づけをした重要な論集。 |
【3】 | 東京裁判とオランダ | |
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プールヘースト,L.ファン【著】〈Poelgeest,L.van〉 / 水島治郎 / 塚原東吾【訳】 1997/05 (みすず書房) 標準価格:税込\2,940 ISBN:9784622036579 |
★八十年代以降の粟屋研究では、大国アメリカの政治的利害が分析の主な対象だったが、本書はその他の参加国の一つである「小国」オランダの取り組みを明らかにしている。多角的・多国籍的な視点を提案した点で重要。また、日米の研究者にはなかなか読みこなせないオランダ語文献を広く利用した点も貴重な成果。 |
【4】 | 東京裁判の国際関係―国際政治における権力と規範 | |
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日暮吉延 2002/11 (木鐸社) 標準価格:税込\10,500 ISBN:9784833223287 |
★本書は、東京裁判の歴史的意義を「国際政治」という文脈で評価し直したもの。アメリカだけでなく、イギリスやオーストラリア、インドなど、連合国各国から集めた膨大な外交文書ならびに裁判関係文書を綿密に読み込む。多国間の利害と外交関係を探り、「外交史」としての裁判論の集大成といえる重要な書。日暮氏の研究成果は、その後各種刊行物でも読めるようになり、今年刊行された新書版(『東京裁判』講談社現代新書、2008年1月出版)もその一つに数えられよう。 |
5.東京裁判六十周年を記念しての再評価 |
今年で東京裁判結審から六十周年ということから、従来の裁判論の動向や今後の研究指針を読みやすい形にまとめた書籍が、だいぶ刊行されています。ここでは、主要と思われるものを二、三点のみご紹介します。 |
【1】 | 歴史認識問題の原点・東京裁判 (シリーズ世界と日本) | |
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山田朗【編著】 / 藏満茂明 / 本庄十喜【著】 2008/10 (学習の友社) 標準価格:税込\1,500 ISBN:9784761712389 |
【2】 | 東京裁判の教訓 (朝日新書) | |
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保阪正康【著】 2008/07 (朝日新聞出版) 標準価格:税込\777 ISBN:9784022732200 |
【3】 | 東京裁判 (講談社現代新書) | |
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日暮吉延【著】 2008/01 (講談社) 標準価格:税込\1,155 ISBN:9784062879248 |
【4】 | 東京裁判を正しく読む (文春新書) | |
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牛村圭 / 日暮吉延【著】 2008/10 (文藝春秋) 標準価格:税込\840 ISBN:9784166606603 |
6.国際人道法発展史の一環としての東京裁判論 |
日本国内では、二項対立的な「東京裁判否定・肯定論」から、八十年代に粟屋研究が展開されるに至り、裁判論は今では出尽くした感があります。しかし他方、国際人道法の法制化が冷戦後になって飛躍的に進むと、新たな視点からの裁判研究が各国でなされるようになりました。 新研究の論点は多様で、必ずしも統一した裁判評価は下されていません。しかし、「東京裁判を国際人道法発展史の文脈で評価してみる」というアプローチはほぼ共通しており、裁判の今日的意義を考えてみようとする、現在の国際的流れを色濃く反映しているといえましょう。 ここでは、六十周年に刊行された英文の研究書四冊(うち一冊は日本語改訂版あり)と、裁判の国際法上での位置づけを理解していくうえで有用な概説書をいくつかご紹介しましょう。 |
【1】 | 東京裁判とニュルンベルクの遺産 War Crimes Tribunals and Transitional Justice : The Tokyo Trial and the Nuremburg Legacy (Contemporary Security Studies) | |
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Futamura, Madoka 2007/12 (Routledge) Web販売価格:税込\12,862 / 標準価格:税込\19,257 ISBN:9780415426732 |
★本書は、東京裁判が「法の支配」や「人権尊重」といった民主的理念を戦後日本に育てていくうえで、どのような貢献をしたかを考察したもの。近年話題になっている“transitional justice”―「移行期における正義」―という、きわめて今日的な課題の視点から分析を試みた。 |
【2】 | 極東国際軍事裁判の再評価 The Tokyo International Military Tribunal : A Reappraisal | |
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Boister, Neil / Cryer, Robert 2008/05 (Oxford Univ Pr) Web販売価格:税込\11,025 / 標準価格:税込\16,506 ISBN:9780199278527 |
★リチャード・マイニア氏が1970年代初頭に出版した『勝者の裁き』以来、英語圏では本格的な裁判研究がなされずじまいだった。本書は、上記の二村まどか氏の著作『War Crimes Tribunals…』と並んで、長年の空白を埋める研究書。二人の法律家が共同で著した。各種法理論、裁判手続き、被告の権利などを取り上げて論じ、国際刑事裁判としてのあり方に光を当てた。 |
【3】 | 極東国際軍事裁判文書集(全2巻) Documents on the Tokyo International Military Tribunal : Charter, Indictment and Judgments | |
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Cryer, Robert (EDT) / Boister, Neil (EDT) 2008/10 (Oxford Univ Pr) Web販売価格:税込\26,643 / 標準価格:税込\39,889 ISBN:9780199541928 |
★東京判決は、旧ユーゴ国際法廷で「歴史的判例」として引用されていながら、その全文は一般の読者や研究者の手の届きにくい高価ないし絶版の刊行物に掲載されているのみ。本シリーズは、この問題を是正するもの。東京判決のほか、裁判所憲章、起訴状、法手続細則、五つの別個意見書を網羅しており、今後の裁判研究には欠かせぬ刊行物といえる。日本語訳の判決書全文についても、このような出版物が近い将来刊行されることが望まれる。 |
【4】 | 東京裁判―第二次大戦後の法と正義の追求 The Tokyo War Crimes Trial : The Pursuit of Justice in the Wake of World War II (Harvard East Asian Monographs) | |
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Totani, Yuma 2008/04 (Harvard University Asia Center) Web販売価格:税込\4,277 / 標準価格:税込\6,376 ISBN:9780674028708 |
★本書は、東京裁判を国際人道法発展史に位置づけながら功罪を分析する。特に同時代のニュルンベルク裁判との「横」のつながり、旧ユーゴ・ルワンダなどの国際法廷との「縦」のつながりを比較研究の見地から探る。また、パル反対意見書の法理論が現行のハーグ国際法廷などの諸見解と相容れない点を指摘、パル評価をめぐる論議に一石を投じる。 |
【5】 | 東京裁判―第二次大戦後の法と正義の追求 | |
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戸谷由麻【著】 2008/08 (みすず書房) 標準価格:税込\5,460 ISBN:9784622074069 |
★上記の書を筆者自身が訳し改訂を加えた。東京裁判論に詳しい日本の読者層を想定し、英語版の原書より中身の濃い内容となっている。 |
【6】 | 新版 国際人道法 (再増補版) | |
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藤田久一【著】 2003/06 (有信堂高文社) 標準価格:税込\5,040 ISBN:9784842040400 |
★著者の藤田久一氏は、旧ユーゴ・ルワンダ法廷が設立する以前の少なくとも1980年代から、ニュルンベルク・東京両裁判が国際人道法発展史上にもつ意義を指摘してきた法学者。 本書は、国際人道法史を概説したものだが、ニュ・東京裁判の歴史的位置づけも明らかにしている点で有用。1980年に刊行された『国際人道法』の改訂版。 |
【7】 | 国連による国際刑事裁判―旧ユーゴ、ルワンダとシエラレオーネ The UN International Criminal Tribunals : The Former Yugoslavia, Rwanda and Sierra Leone | |
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Schabas, William A. 2006/08 (Cambridge Univ Pr) Web販売価格:税込\8,996 / 標準価格:税込\13,406 ISBN:9780521609081 |
★今日の国際刑事裁判所に関する書物は豊富だが、その中でも本書は、東京裁判の歴史的意義にもところどころ言及しており、文体も簡潔で概説書として有用。 |
【8】 | 戦争犯罪―知っておくべき事柄 2.0 Crimes of War : What the Public Should Know: 2.0 REV UPD Edition | |
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Gutman, Roy (EDT) / Rieff, David (EDT) / Dworkin, Anthony (EDT) / Mendez, 2007/11 (W W Norton & Co Inc) Web販売価格:税込\2,383 / 標準価格:税込\3,982 ISBN:9780393328462 |
★本書は、戦争法規、国際人道法、人権問題にかんする幅広い事項について、AからZまで項目を設け、簡潔・明瞭な説明を提供している。戦犯問題の研究者にも、一般の読者にも広く利用できる便利なレファレンス書。 |
7.BC級戦犯問題に関する新しい研究動向 |
東京裁判の意義を考察していくうえで、「国際人道法発展史」という文脈の重要性が注目されているのは上に指摘した通りですが、その他に、(1)東京裁判とBC級戦犯裁判のつながり、(2)東京裁判と戦後補償裁判とのつながり、という文脈も、今後の研究に望まれましょう。近年、BC級戦犯裁判と補償裁判の資料整理がかなり進み、新しい研究も発表されています。法と歴史学の境界を越えた新しいアプローチが期待されている今日、比較研究の材料として注目していきたいものです。 ここでは、今後の指針となりうる最近の成果をいくつか紹介しましょう。 |
【1】 | BC級戦犯裁判 (岩波新書) | |
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林博史【著】 2005/06 (岩波書店) 標準価格:税込\777 ISBN:9784004309529 |
★著者の林博史氏は、英国によるBC級戦犯裁判研究の第一人者。1998年出版の『裁かれた戦争犯罪―イギリスの対日戦犯裁判』(岩波書店)は、画期的なBC級戦犯裁判研究として関心を集めた。 それ以後、英国以外のBC級裁判資料の収集・分析もすすめている。本書では、BC級裁判の俯瞰図を読者にわかりやすい形で提供。 事務局注:書評空間BOOKLOGで書評が読めます。 http://booklog.kinokuniya.co.jp/hayase/archives/2005/07/post_12.html |
【2】 | 法廷の星条旗―BC級戦犯横浜裁判の記録 | |
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横浜弁護士会BC級戦犯横浜裁判調査研究特別委員会【著】 2004/07 (日本評論社) 標準価格:税込\2,730 ISBN:9784535583917 |
★従来のBC級戦犯裁判研究は、たいてい歴史家の手によるものだったが、本書は法律家による研究である点で異例。歴史家が見逃しがちな法廷での争点を明らかにしている。横浜裁判の主要な例を中心に論じる。 |
【3】 | 砂上の障壁―中国人戦後補償裁判10年の軌跡 | |
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中国人戦争被害賠償請求事件弁護団【編】 2005/08 (日本評論社) 標準価格:税込\2,310 ISBN:9784535514713 |
★本書は、ここ十数年にわたり日本の法廷で展開された中国人被害者関係の補償裁判を総括したもの。上記の『法廷の星条旗』と同様、弁護士業を営む法の専門家のメスが入っていて画期的。 補償問題を中心にしながら戦争犯罪の刑事問題にも触れており、裁判研究としても有意義。 |
【4】 | 戦犯裁判と性暴力 (日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録〈vol.1〉) | |
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バウネット・ジャパン【編】 2000/05 (緑風出版) 標準価格:税込\2,940 ISBN:9784846100063 |
加害の精神構造と戦後責任 (日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録〈vol.2〉) | ||
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池田恵理子 / 大越愛子【責任編集】 / VAWW‐NET Japan【編】 2000/07 (緑風出版) 標準価格:税込\2,940 ISBN:9784846100100 |
「慰安婦」・戦時性暴力の実態〈1〉日本・台湾・朝鮮編 (日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録〈Vol.3〉) | ||
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金富子《キムプジャ》 / 宋連玉【責任編集】《ソンヨノク》 / VAWW‐NET Japan【編】 2000/11 (緑風出版) 標準価格:税込\3,150 ISBN:9784846100179 |
「慰安婦」・戦時性暴力の実態〈2〉中国・東南アジア・太平洋編 (日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録〈vol.4〉) | ||
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西野瑠美子 / 林博史 / VAWW‐NET Japan【編】 2000/12 (緑風出版) 標準価格:税込\3,570 ISBN:9784846100223 |
女性国際戦犯法廷の全記録 (日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録〈vol.5〉) | ||
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VAWW‐NET Japan【編】 2002/05 (緑風出版) 標準価格:税込\3,570 ISBN:9784846102067 |
女性国際戦犯法廷の全記録〈2〉 (日本軍性奴隷制を裁く―2000年女性国際戦犯法廷の記録〈第6巻〉) | ||
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VAWW‐NET Japan【編】 2002/07 (緑風出版) 標準価格:税込\4,095 ISBN:9784846102074 |
★本シリーズは、2000年12月に東京で開催された民衆法廷、「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」を記録。従軍慰安婦問題を中心に戦時下性暴力の犯罪性を解明し、各種論文も含む。 戦犯裁判をジェンダーの視点から問い直した作品で、2001年度山川菊栄賞特別賞受賞。 |
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