| 【公害の歴史と環境学】 (No.145 2007. 8.31配信号) |
「……科学・技術をこういうふうな自分の利益のためにだけ勉強しますと、自然は当然、自分が利用すべき、それもぶつぶつに切って都合のいいところだけ利用すべき対象としてしか学生には受けとられません。そこで公害に対しても……、水が汚れれば下水処理であり、大気汚染に対しては高い煙突である、というふうに、自然の……部分的な利用の技術しか現在用意できません。しかも、そういった対策技術は、いつも公害という複雑な社会現象に対して、事後の対策として手おくれになりながら、ようやく部分的に適用されたにすぎないのです。」(宇井純『合本 公害原論』「第1回 はじめに」より) 昨年11月に亡くなられた宇井純氏がこのような認識から東大で“自主講座”を始めたのは、1970年10月のことでした。それから40年ちかい歳月が経ち、環境問題や持続可能な社会といったテーマはあらゆる学問分野および広く一般社会に浸透しましたが、一方で、未曾有の環境汚染がもたらした水俣病の傷は未だ癒えず、中国をはじめとする発展途上国では同様の過ちがまさに繰り返されつつあるように見えます。 ここでは、水俣病を中心としたわが国の公害の歴史と現状を振り返るとともに、環境に関する特に社会科学分野の最近の成果をご紹介いたします。 |
1.宇井純「公害原論」 |
【1】 | 自主講座「公害原論」の15年 | |
---|---|---|
宇井純【編著】 2007/05 (亜紀書房) 標準価格:税込\3,675 ISBN:9784750507026 |
★伝説の講座の熱気が蘇る! 1970年、東大に帰任した“万年助手”宇井純が全国で深刻化する公害問題と高まる住民運動を前にして、公害の研究・調査結果を市民に直接伝える場とし開講した自主講座「公害原論」。 宇沢弘文、星野芳郎、羽仁五郎、都留重人、松井やより、松下竜一ほか、多彩な講師を招き、反公害運動のみならず、大学改革の先駆的拠点となった講座の15年間の軌跡をたどる。 (『公害自主講座15年』(1991年刊)の改題) |
【2】 | 合本 公害原論 (新装版) | |
---|---|---|
宇井純【著】 2006/12 (亜紀書房) 標準価格:税込\3,990 ISBN:9784750506180 |
★1971年の初版刊行以来、版を重ねてきた名著が昨年末についに復刊! それまでの企業寄りの技術論に終始していた風潮に警鐘を鳴らし、「公害」の社会的意味を初めて問い、現在の環境学の礎となった記念碑的作品。1970年10月から東大で始まった夜間自主講座の13回分を収載。 |
2.水俣学 |
【1】 | 水俣学講義 | |
---|---|---|
原田正純【編著】 2004/03 (日本評論社) 標準価格:税込\2,835 ISBN:9784535583849 |
★水俣学は水俣病という未曾有の人災をたんに知識として人々に伝えるだけでなく、水俣病を媒介に学問のあり方、人々の生き方、社会のありようなどを考える契機となることを目論む。その学の構築を目指す真摯な営為の記録。 |
【2】 | 水俣学講義〈第2集〉 | |
---|---|---|
原田正純【編】 2005/07 (日本評論社) 標準価格:税込\2,835 ISBN:9784535584433 |
★水俣病を巡るさまざまな問題を通して社会や人間を考える縁としようという水俣学講義の第2弾。 |
【3】 | 水俣学講義 第3集 | |
---|---|---|
原田正純 2007/01 (日本評論社) 標準価格:税込\2,835 ISBN:9784535584822 |
★水俣病公式発見から50年。その節目を迎えても、なお水俣病は終わっていない。この問題の根深さ、奥深さがそこにある。シリーズ第3弾。 |
【4】 | 豊かさと棄民たち ―水俣学事始め(双書時代のカルテ) | |
---|---|---|
原田正純 2007/04 (岩波書店) 標準価格:税込\1,155 ISBN:9784000280884 |
★どの公害と環境破壊にも共通の法則性がある。汚染は歴史的・地域的差別の上に発生し、被害者の存在は常に隠蔽され忘却されてゆく。医師として患者と共に闘い続けた著者が、水俣学という総合的な人間学を構想。今も終わらない社会的差別の構造にメスを入れ、経済発展の陰に「棄てられた」犠牲者たちを真に追悼する。 |
【5】 | 「存在の現れ」の政治―水俣病という思想 | |
---|---|---|
栗原彬【著】 2005/04 (以文社) 標準価格:税込\2,520 ISBN:9784753102402 |
★水俣病公式発見から半世紀。人類史上最初で最大の生命破壊・環境汚染は、今日われわれに何を語りかけているのか? 近代日本が一貫して追求した生産力ナショナリズムが破綻に瀕している今日、支配しない他者を宛先とする新しい人間像を“水俣病という思想”に読み解く。 |
【6】 | 新潟水俣病問題―加害と被害の社会学 (新版) | |
---|---|---|
飯島伸子 / 舩橋晴俊【編著】 2006/04 (東信堂) 標準価格:税込\3,990 ISBN:9784887136632 |
★企業・行政の責任回避と不徹底をはじめとした、加害と被害を連鎖的に拡大させたメカニズムを社会科学的調査に基づき剔抉し、大量の未認定患者の存在をクローズアップした前版(1999年刊)に、その後の新たな問題展開を増補、問題の全貌を包括する最新版。 |
【7】 | 「水俣」の言説と表象 | |
---|---|---|
小林直毅【編】 2007/06 (藤原書店) 標準価格:税込\4,830 ISBN:9784894345775 |
★活字及び映像メディアの中で描かれ見られた「水俣」を検証し、「水俣」を封殺した近代日本の支配的言説の問題性を問う。 |
【8】 | 水俣病誌 | |
---|---|---|
川本輝夫【著】 / 久保田好生 / 阿部浩 / 平田三佐子 / 高倉史朗【編】 2006/02 ((横浜)世織書房) 標準価格:税込\8,400 ISBN:9784902163216 |
★1999年2月に67歳で逝去した川本輝夫さん。水俣病問題と闘いつづけた全生涯に残した数多くの著作を集成。 公式確認から半世紀にいたる水俣病が、2004年最高裁判決が裏付けるとおり、未だに終りえないのは何故か。被害地に生まれ闘いの下で生涯を閉じた著者の全軌跡の中にその解がある。 |
【9】 | 水俣病闘争 わが死民 (復刻・シリ−ズ1960/70年代の住民運動) | |
---|---|---|
石牟礼道子 2005/11 (創土社) 標準価格:税込\2,310 ISBN:9784789300445 |
★……熊本・告発の運動は七二年一杯続いたこの自主交渉闘争で頂点を極めたと思う。七三年の第一次訴訟の判決以後も、さまざまな形で水俣病患者と支援者の運動は続いたが、「告発」が体現していたエトスは衰弱し消滅したとしか言いようがない。本書はその「告発」の運動のよかれあしかれ精髄が記録されている。〔新版あとがきより〕 |
【10】 | 苦海浄土―わが水俣病 (新装版) (講談社文庫) | |
---|---|---|
石牟礼道子【著】 2004/07 (講談社) 標準価格:税込\700 ISBN:9784062748155 |
★工場廃水の水銀が引き起こした文明の病・水俣病。この地に育った著者は、患者とその家族の苦しみを自らのものとして、壮絶かつ清冽な記録を綴った。世に出て30数年を経たいまなお、極限状況にあっても輝きを失わない人間の尊厳を訴えてやまない。 末永く読み継がれるべき<いのちの文学>、新装版。 |
3.四日市学 |
【1】 | 四日市学講義 | |
---|---|---|
朴恵淑【編】 2007/07 ((名古屋)風媒社) 標準価格:税込\2,940 ISBN:9784833110754 |
★四日市公害訴訟判決から35年――。いま、「地球市民の時代」の入口に立ち、環境教育への積極的、実践的成功事例を生み出すべく、日本全国へ、アジアへ発信する新しい地域協力・国際協力のかたちを探る。 |
【2】 | 四日市学―未来をひらく環境学へ | |
---|---|---|
朴恵淑 / 上野達彦 / 山本真吾 / 妹尾允史【著】 2005/07 ((名古屋)風媒社) 標準価格:税込\2,100 ISBN:9784833110648 |
★持続可能な開発とは? 社会と環境のあり方はどうあるべきなのか…。四日市市公害の経験から環境学、法律学、文学、科学など、分野を超えた専門家が「未来形の課題」を学ぶ総合環境学を提唱する。「負の遺産」から学び、アジアへ、世界へ…。 |
4.環境法・経済・政策 |
【1】 | 新・環境法入門―公害から地球環境問題まで | |
---|---|---|
吉村良一 / 水野武夫 / 藤原猛爾【編】 2007/06 ((京都)法律文化社) 標準価格:税込\2,940 ISBN:9784589030306 |
★環境法の全体像を市民・住民の立場で学ぶ入門書。T部は公害・環境問題の展開と環境法の基本概念を概説、U部では最近の環境問題の事例から法的争点と課題を探る。旧版を大幅に改め、最新の動向を盛りこむ。 |
【2】 | 環境法入門 (補訂版)(有斐閣アルマ) | |
---|---|---|
交告尚史 / 臼杵知史 / 前田陽一 / 黒川哲志【著】 2007/04 (有斐閣) 標準価格:税込\1,785 ISBN:9784641123168 |
★環境法の入門用テキストの最新版。初版刊行以後の石綿健康被害救済法等の法令改正や、国立マンション訴訟上告審判決、小田急訴訟上告審判決等の最新判例、統計数字など、最新情報を織り込んだ。コンパクトでありながら、さらに内容の充実した1冊。 |
【3】 | 環境法 (第2版) | |
---|---|---|
大塚直【著】 2006/04 (有斐閣) 標準価格:税込\4,095 ISBN:9784641134355 |
★環境法の第一人者による、体系的教科書の最新版。複数の法領域にまたがった環境法学をひとつの法分野として構築し、学習・研究から実務まで幅広いニーズに応える。新たに廃掃法や化審法などの重要な法改正を織り込んだ。 |
【4】 | 国際環境法 | |
---|---|---|
バーニー,パトリシア・W.〈Birnie,Patricia W.〉 / ボイル,アラン・E.【著】〈Boyle,Alan E.〉 / 池島大策 / 富岡仁 / 吉田脩【訳】 2007/06 (慶應義塾大学出版会) 標準価格:税込\10,500 ISBN:9784766413779 |
★世界的に定評ある、当分野最高の研究書、待望の翻訳。 国際環境法(国際法の中で環境に関する法律、条約、協定などを扱う分野)のあらゆる局面における争点や定義、歴史および現状について詳述されている本書は、国際法および環境法の研究者にとって必携の大冊。 |
【5】 | テキストブック 環境と公害―経済至上主義から命を育む経済へ | |
---|---|---|
泉留維 / 三俣学 / 室田武 / 和田喜彦【著】 2007/04 (日本評論社) 標準価格:税込\2,730 ISBN:9784535555112 |
★公害は決して「昔話」ではない。環境保全と経済成長とは両立しうるのか。エコロジー経済学・環境経済学のエッセンスをわかりやすく解説するテキスト。 |
【6】 | 環境経済学 (有斐閣アルマ) | |
---|---|---|
細田衛士 / 横山彰【著】 2007/03 (有斐閣) 標準価格:税込\2,205 ISBN:9784641123137 |
★実際のケースや制度をバランスよく紹介し、基礎理論を初学者にもわかりやすく解説した、日本発、待望のスタンダード・テキスト。環境問題のメカニズムを理論的に解明し、政策効果を詳しく分析。近年の環境政策の動向や自治体の取り組みなど、トピックも充実。 |
【7】 | 持続可能な発展 (リーディングス環境〈第5巻〉) | |
---|---|---|
淡路剛久 / 川本隆史 / 植田和弘 / 長谷川公一【編】 2006/09 (有斐閣) 標準価格:税込\4,515 ISBN:9784641071919 |
★環境問題の激化に伴い様々な学問分野での環境研究も飛躍的に進展し、多くの研究蓄積と政策提言がなされている。本シリーズは、こうした状況を踏まえ、社会科学・人文科学の領域を中心として古今東西の約200に及ぶ必読文献が網羅され、環境問題について考え学んでいくうえでの知的遺産の宝庫となっている。 環境問題の深刻化に伴い、西欧型近代化の是非や真の豊かさとは何かが問い直され、従来の開発形態や発展パターンに代わる新しい理念が模索されるようになった。第5巻は、こうした《持続可能な発展》の概念に関する重要論攷を体系的に精選・抜粋し編集解題を付した。 |
【8】 | 法・経済・政策 (リーディングス環境〈第4巻〉) | |
---|---|---|
淡路剛久 / 川本隆史 / 植田和弘 / 長谷川公一【編】 2006/05 (有斐閣) 標準価格:税込\4,830 ISBN:9784641071902 |
★第4巻は、環境問題の解決に必要とされる、国家・社会・集団の様々なレベルにおける公式的あるいは非公式的な政策投入に焦点が当てられる。環境政策を進める基礎となり主要な道具となる法・経済・政策についての重要論稿を体系的に精選・抜粋し編集解題を付した。 |
5.資料 |
【1】 | 公害・労災・職業病年表 (新版) | |
---|---|---|
飯島伸子 2007/06 (すいれん舎) 標準価格:税込\15,750 ISBN:9784903763125 |
★「居住者の視点、生活者の視点、被害者の視点から環境問題に接近する」ことを追究した環境社会学会初代会長 飯島伸子氏が1970年代末にまとめた500年間にわたるわが国の社会的災害史の記録が、新たに「県別地名」「人名」「事項」の3種類の索引を付して30年ぶりに復刊。 |
【2】 | 宇井純収集公害問題資料1 『自主講座』全3回配本(完結) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
埼玉大学共生社会研究センター【監修】 (すいれん舎)
|
*ご注文は、弊社営業担当または末尾に記載されている紀伊國屋書店 e-Alert事務局まで ご連絡ください。 ★埼玉大学共生社会研究センターが所蔵する宇井純氏が収集した日本と世界中の公害問題資料の中から、整理され資料的価値のあるものを復刻刊行するシリーズの第一弾として、東大で行なわれた自主講座の機関誌であった『自主講座』を完全復刻。 |
【3】 | 宇井純収集公害問題資料2 『公害原論』全3回配本予定 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
埼玉大学共生社会研究センター【監修】 (すいれん舎)
|
*ご注文は、弊社営業担当または末尾に記載されている紀伊國屋書店 e-Alert事務局まで ご連絡ください。 ★「宇井純収集公害問題資料」シリーズ第二弾。自主講座「公害原論」の講義録。 *第1回配本が既刊、第2回は今秋、第3回は来年5月の刊行予定です。 |
【4】 | 「四日市公害」市民運動記録集 (民衆史資料シリ−ズ) | |
---|---|---|
2007/06 (日本図書センタ−) 標準価格:税込\88,200 ISBN:9784284400510 |
★戦後日本の高度経済成長のかげで起きた「四日市公害」とは何か。 月刊ミニコミ誌『公害トマレ』のテスト版0号(1971年2月)から最終第100号(1979年7月)までの全号と、以後不定期に作られた藤原版、四日市版までを集成・復刻。1970年代の、市民による公害反対運動の様子をつぶさに伝える。 |
【5】 | 公害文献大事典―1947(昭和22)年〜2005年(平成17)年 | |
---|---|---|
寺西俊一【監修】 / 文献情報研究会【編著】 2006/06 (日本図書センター) 標準価格:税込\15,750 ISBN:9784284500135 |
★環境問題の原点、「公害」の軌跡を示すレファレンス。 1947年〜2005年までに刊行された公害に関する文献3000点余の書誌データを刊行年ごとの五十音順に掲載。水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市喘息の四大公害病ごとに、基本書目を一覧、各公害の重要文献を知る事ができる。 |
◇ Kinokuniya e-Alert Plus!のバックナンバーはこちらから。 | ||
◇ Kinokuniya e-Alert Plus!は、e-Alertユーザへ配信しているメールサービスです。
Plus!メールの配信をご希望の方は、 Kinokuniya e-Alert のご利用登録をして下さい。 |
||
◇ 掲載書籍は、Plus!メール配信時点でお取り寄せが可能なものをセレクトしています。売れ行き状況により、
品切れやお届けに時間がかかる場合がありますので、恐れ入りますが、ご諒承ください。 |
||
【発 行】 【問合せ】 |
紀伊國屋書店 e-Alert事務局 e-mail:ealert@kinokuniya.co.jp ※ ご連絡の際に入力された個人情報はお問合せに対する回答以外には利用致しません。 |