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【「祈る平和」から「つくる平和」へ:『平和政策』を巡って】 (No.96 2007.1.30配信号) |
―冷戦が終わったというのに、なぜ世界各地で内戦が起きるのか。また、ひとたび発生した内戦に対して、国
際社会はどのように対応しているのか。さらに、テロとは何なのか― これらの問いに対して、国際政治学・国際法などの分野から幅広く検討された、『平和政策』(大芝亮・藤原帰 一・山田哲也(編) 2006)が有斐閣から刊行されています。 ―従来の伝統的な国際政治学・国際関係論の教科書を読んでも、上述のような「現在の」問題の理解には必 ずしもつながっていないのではないか― こうした考えのもと、分かりにくい専門用語・概念について「用語解説」や「コラム」を設け、国際政治学・国際関 係論などの基本的な理論についても丁寧な説明が加えられた、この『平和政策』を手がかりに、編者のおひと りである山田哲也先生に「平和構築」という国際社会活動を扱っている書物をご紹介頂きます。 (以降、*に続く内容紹介文以外のコメントは山田先生に頂きました) |
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1.平和構築の全体像―『平和政策』 |
【1】
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平和政策(有斐閣ブックス) | |||
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大芝亮 藤原帰一 山田哲也(編) 2006/10 (有斐閣) |
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標準価格:税込\2,625 ISBN:9784845904679 |
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◆本書『平和政策』の構成は、平和構築の全体像を国際政治学・国際法の基本的な理論と結びつけたものとな
っている。現場で実践されていることだけでも理屈だけでもないテキストを目指したからである。 冷戦終結によって世界には平和が訪れるかに思われたが、現実には紛争が多発、テロへの対応も世界規模で の関心事となっており、国連やNGOの人道支援・復興支援の活動も日々報道されている。この「紛争で荒廃した 国や人々に平和を取り戻させるための支援活動」すなわち平和構築のための活動は、軍隊による秩序維持に始 まり、政治・法制度改革、選挙、紛争責任者の処罰、難民・避難民の帰還・再定住、経済社会の復興、等々極 めて多岐にわたり、「全体像」を把握するのは極めて難しい。 一人でも多くの人が本書を読み、国際社会が直面している現実に触れ、平和構築についての理解を深めて欲し い。 |
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2.「平和構築」関連書 |
平和構築をめぐっては、すでに「現場からの報告」型のものから「理論的研究」型に至るまで、多くの書籍が公
刊されている。 『外交フォーラム』第220号(2006年11月号)64ページに網羅的な書籍リストが掲げられているので、ぜひ参考 にして頂きたい。同号は「平和構築というプロフェッション」という特集を組んでおり、平和構築の全体像がよく わかる。 ※『外交フォーラム』第220号(2006年11月号)⇒ <出版社サイト>はこちら ここでは、『外交フォーラム』誌の書籍リストも参考にしながら、平和構築や平和政策に関する基本的な邦語の書籍を紹介したい。なお、『平和政 策』の執筆者のうち、篠田英朗氏と上杉勇司氏は【1】や【2】に、山田と星野俊也氏は【3】に関わっている。 |
【1】
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平和構築と法の支配―国際平和活動の理論的・機能的分析 | |||
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篠田英朗 2003/10 (創文社) |
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標準価格:税込\2,940 ISBN:9784423710562 |
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◆「法の支配」の確立を「戦略」に据えて平和構築の全体像を分析したもの。大佛次郎論壇賞を受賞した、必読 文献中の必読文献。 |
【2】
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紛争と人間の安全保障―新しい平和構築のアプローチを求めて | |||
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篠田英朗 上杉勇司(編) 2005/06 (国際書院) |
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標準価格:税込\3,570 ISBN:9784877911461 |
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◆「人間の安全保障」をキーワードに、さまざまなアクターの紛争解決・平和構築における役割を論じた論文集。
共編者の上杉勇司氏には『変わりゆく国連PKOと紛争解決−平和創造と平和構築をつなぐ』(明石書店、2004
年、3990円)という単著もある。 (関連書) 変わりゆく国連PKOと紛争解決−平和創造と平和構築をつなぐ 上杉勇司 2004/06 (MAGNARD) 標準価格:税込¥4,200 ISBN:9784750319285 |
【3】
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紛争と復興支援―平和構築に向けた国際社会の対応 | |||
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稲田十一(編) 2004/05 (有斐閣) |
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標準価格:税込\2,520 ISBN:9784641162082 |
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◆平和構築・復興支援について、従来の開発援助政策との関連に重点を置いて議論している。大学のゼミなど
で用いるのに適切なレベル。 なお、稲田十一氏には、吉田鈴香氏・伊勢崎賢治氏との共著による『紛争から平和構築へ』(論創社、2003年、 2625円)もあり、こちらの方が一般向けの内容となっている。 (関連書) 紛争から平和構築へ 稲田十一 吉田鈴香 伊勢崎賢治 2003/12 (論創社) 標準価格:税込¥2,625 ISBN:9784846003777 |
【4】
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国際紛争と予防外交 | |||
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納家政嗣 2003/05 (有斐閣) |
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標準価格:税込\2,625 ISBN:9784641076709 |
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◆伝統的な安全保障論の観点から、冷戦中・冷戦後の国連平和維持活動(PKO)の意義、破綻国家への対応 や人道的介入について論じている。 |
【5】
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人道的介入―正義の武力行使はあるか(岩波新書) | |||
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最上敏樹 2001/10 (岩波書店) |
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標準価格:税込\777 ISBN:9784004307525 |
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◆人道的介入を扱った書物が多数ある中、本書は新書でありながら、議論の間口の広さと奥行きの深さで群を 抜く。 |
【6】
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国連による平和と安全の維持―解説と資料 | |||
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横田洋三(編) 2000/02 (国際書院) |
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標準価格:税込\8,400 ISBN:9784877910945 |
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*国連の各PKOについて解説と決議や報告書といった国連文書の翻訳が掲げられた資料集。本書は1996年末
までをカバーしているが、本年2月には1997年以降のPKOを網羅した続刊が刊行される予定。
(予価10000円、ISBN978-4-87791-166-9) 「平和構築」を任務に加えたPKOについては、続刊の方に収録されている(ただし、国連カンボジア暫定行政機 構(UNTAC)は一巻目に収録) |
【7】
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安全保障の今日的課題―人間の安全保障委員会報告書 | |||
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人間の安全保障委員会 2003/11 (朝日新聞社) |
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標準価格:税込\1,995 ISBN:9784022578631 |
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◆緒方貞子氏とアマルティア・セン氏が共同議長を務めた「人間の安全保障委員会」の報告書である。国際社 会が直面する脅威を網羅的に把握するのに便利な一冊。 |
なお、『平和政策』の編者を務めた三人については、直接、平和構築に関係の無いものも含め、次のような著書・共著書がある。 |
藤原帰一著/平和のリアリズム | ||||
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藤原帰一 2004/08 (岩波書店) |
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標準価格:税込\1,155 ISBN:9784000247061 |
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*全面核戦争の脅威の終焉に安堵した世界は、いままた新しい戦争の時代に突入した。各地で火を噴く地域紛争、
高揚するナショナリズム、民主化後の政治不安、そして、テロと帝国の暴力…。 著者は、この十数年、激動の世界に対して冷徹な分析を行い、リアルな平和構想を打ち出してきた。粘り強い思考の 成果を初めて一冊に収めた待望の時論集。 <2005年度(第26回)石橋湛山賞受賞作> |
藤原帰一著/「正しい戦争」は本当にあるのか―論理としての平和主義 | ||||
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藤原帰一 2003/12 (ロッキング・オン) |
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標準価格:税込\1,680 ISBN:9784860520311 |
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*戦争が必要悪だなんて本当に言いきっていいのか。サダム・フセインを倒すためにはどうしても戦争をしなければな
らなかったのか。 アフガニスタンやイラクへの安易な武力攻撃に反対した気鋭の国際政治学者、藤原帰一が、あくまで冷静に、論理的 に「戦争と平和」という、もっとも本質的な問題をいちから解説。 |
藤原帰一著/戦争を記憶する―広島・ホロコーストと現在 | ||||
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藤原帰一 2001/02 (講談社) |
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標準価格:税込\714 ISBN:9784061495401 |
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*絶対平和を願う広島と、絶対悪に立ち向かう責任を問うホロコーストの違いとは何か。なぜ反戦思想が生まれ、一 方で、なぜいまナショナリズムが台頭するのか。戦争を語ることの本質を、真摯に問い直す。 |
大芝亮監修/「いつ・どこで・何がおきたか?国際紛争の本」シリーズ (全5巻セット) ※分売もあります | ||||
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大芝亮 2004/04 (岩崎書店) |
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標準価格:税込\14,700 ISBN:9784265103171 |
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*第2次世界大戦から今日まで、世界各地でおきた国際紛争をくわしく、そしてわかりやすく紹介。「いつ」「どこで」 「何が」「なぜ」「どのように」おきたか、豊富な写真・図版を使いながら、解説。 |
大芝亮共著/アメリカのナショナリズムと市民像―グローバル時代の視点から | ||||
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大津留(北川)智恵子 大芝亮(編著) 2003/09 (ミネルヴァ書房) |
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標準価格:税込\4,725 ISBN:9784623038428 |
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*アメリカのナショナリズムはどのように表れるか、ナショナリズムをグローバルな文脈で捉えると何が見えてくるの
か、そしてアメリカの内に生じる市民像はアメリカのナショナリズムをどのように語りなおしているのか。 アメリカのナショナリズムと市民のあり方を考えることは、同時に国家と人々のあり方に普遍的に存在する課題を考え る一助になるだろう。 |
山田哲也共著/CIS:旧ソ連空間の再構成 | ||||
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田畑伸一郎 末沢恵美(編) 2004/03 (国際書院) |
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標準価格:税込\3,360 ISBN:9784877911324 |
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*CIS(独立国家共同体)を、旧ソ連空間に形成されたひとつのまとまりとして捉えようとする一冊。CISの多様化を 見据え、国際関係の観点から分析。類例のないこの共同体は今世紀のひとつの行方を示唆している。 |
山田哲也共著/人道的介入と国連―国連研究 第2号 | ||||
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日本国際連合学会(編) 2001/03 (国際書院) |
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標準価格:税込\2,940 ISBN:9784877911065 |
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*ソマリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、東ティモールなどの事例研究を通じ、現代国際政治が変容する過程での「人 道的介入」の可否、基準、法的評価などを論じ、国連の果たすべき役割そして改革と強化の可能性を探る。 |
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