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書物復権2008年共同復刊

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書物復権によせて


 既刊本が売れない。多くの出版社でそういう声を聞きます。既刊本が売れないから、新刊をたくさん出さないとやっていけない。業界全体の出版点数が増え、既刊本はさらに書店の棚から追い出される、という悪循環。
 
  本というメディアはなくならない、廃れもしない、と私は確信していますが、現在が大きな過渡期であることは間違いないでしょう。長い年月に耐えた名著が手に入らなくなっている、あるいはすぐれた内容の書籍が時の試練というチャンスすら与えられない、というのは、やはり危機的状況と言わざるをえません。  

  ネット書店の出現は出版界に大きな刺激を与えました。功績の一つは、いわゆる「ロングテール」の発見です。年間に数冊しか売れない本でも点数が膨大なら商売になる、という、当たり前といえば当たり前の話。しかしこれはネット書店だからできることで、リアル書店にはスペースの限界があり、出版社が年間売上部数の少ない本を重版すれば大赤字を抱えることになります。それでもこの発見が重要なのは、このままでは消滅するかもしれない書籍の存在と、見失いかけていた読者の「顔」を、あらためて認識したことでした。
 
  さまざまな模索が始まります。オン・デマンド、電子書籍、この「書物復権」共同復刊もその一つです。現状では、どれも安定したビジネスとなるには多くの難題を抱えています。それでも、名著が手に入らない、読めないという状況を少しでも減らす努力を、われわれがやめてしまうことはないでしょう。それは「良書」出版社の(ともすれば傲慢な)望みでも、安直なベストセラー批判でもありません。長い間読みつがれてきた、あるいは読みつがれていく本を欲する読者が、たとえ少人数でも存在する以上、その人々にできる限りロスなく届けることのほかに、本と出版人が生き残る道はないと思うからです。
 
  出版の仕事を長くやってきて、今さらのように思うことがあります。ある本の中身を読者に伝え、買っていただくために重要な要素は何でしょうか? 著者とテーマは言うに及ばずですが、装幀・装画の重要性がさらに増しているように思えます。でも、人の心に波紋を投げかける方法に、やはり言葉(タイトル、コピー、書評etc.)以上のものはないのではないか、と。広告の世界では昔から、誇大広告の最たるものが映画と本だ、と言われています。われわれは、ここらで基本に立ち返り、その本が本当に必要な人へ向け、正確に届く言葉に頭を振りしぼる義務があるのかもしれません。

【ごあいさつ】
 2009年、〈書物復権〉共同復刊、復刊の候補書籍に多数のリクエストをいただきありがとうございました。復刊候補書籍79点のうちから、インターネットやハガキでの希望を受けて復刊が実現する書籍は40点44冊。リクエストをいただいた皆さまには深く感謝いたしますとともに、今回見送られた書籍に対しての強い要望も各発行出版社はたいせつに受け止めております。何らかの機会を得て復刊が実現できるよう最善の努力をしてまいりますので、この後もご支持をいただけますようお願いいたします。
 今回決定した復刊書は5月下旬より、全国約200の協力書店の店頭にて展示されます。再度よみがえった各分野の基本図書、ぜひこの機に手にとってお求めいただけますようお願いいたします。また、次頁でお知らせしております《東京国際ブックフェア》会場内〈書物復権〉共同ブースにても展示を予定しています。  
 かつて刊行された出版物を次代に生かそうとする試みは、復刊の他にオンデマンド出版や電子書籍というような新しい技術の進展とともに実現のための選択肢が拡がっています。それぞれの書籍の性格や、必要とする読者の存在にあわせた利用の仕方ができるようになるのも遠い将来ではないと思われます。「本」というかたち、「デジタル」という仕組みの利点を生かしながら、「本」という知識をつなげるための努力を今後とも継続して参りたいと考えています。

【ご案内】
1.最終ページの注文書に必要事項を記入のうえ、お近くの書店または発行出版社にお申し込みください。
2.刊行は2009年5月下旬を予定しています。
3.いずれも少部数の発行です。品切れの場合はご容赦ください。
4.内容についてのお問い合わせは各発行出版社へお願いします。
5.共同復刊とは別に、各社が独自に復刊を予定している場合があります。発行出版社にお問い合わせください。

【編集者より──みすず書房・栗山雅子】

*今回、多くの支持を受けて復刊の決まった『フィンランド駅へ』担当編集者に、刊行の思いを書いていただきました。  

 編集者生活を振り返って、「出せてよかった」一冊はどれ? と訊かれたら、即座に答えられる。エドマンド・ウィルソン『フィンランド駅へ』(1999年)。さかのぼって、最初に「すごい本らしい」と思ったのは(英語と格闘したのだから、その程度の理解)、学生時代。まだ政治の季節は終わっていなかった。  
  『フィンランド駅へ』のクライマックスは、第一次大戦中の1917年4月。レーニンが亡命先のスイスで「ロシア革命勃発」の一報を聞く。すぐに旅支度。敵国ドイツを通過する「封印列車」に乗って、現在のサンクト・ペテルブルクのフィンランド駅まで戻ってくる。「駅に着いたら逮捕される」と覚悟して。しかし、駅前広場を埋めた数万の労働者はレーニンの到着を待っていた。歓喜した人びとは彼を装甲車の上に押し上げる。……  
  今さらマルクス・レーニンでもないだろう、と言われそうだが、著者が書こうとしたのは、もっと違うことだ。「人間の社会は、人間がつくったもので、神の恩寵ではない」と最初に考えたのは、18世紀イタリアの無名の思想家ヴィーコ、そしてこのヴィーコを100年後に「発見」したのが、フランス革命崩壊のなかで『フランス革命史』を書いたミシュレだった、と著者は説き起こす。その後、「社会は変えられる」という思想と信念は、どんな人たちが、どの地で引き継ぎ、フィンランド駅まで辿り着いたのか。しかも、この人たちは大半が奇人変人で、周囲がどれほど苦労し、悲しい思いをしたか、そこまですべてを、この革命家列伝は語ってくれる。  
  原書は1940年刊行。ソ連ではすでに粛清が進行し、ヨーロッパではヒトラーが快進撃中。その地響きを聞きながら、ウィルソンはアメリカでこの大河ドラマを書いた。さらに1971年の「後記」には、自分たちがフィンランド駅以降の革命の展開に楽観的過ぎたこと、この書は革命家たちが「より良き世界」をつくると信じて行動した、その努力の記述として読まれるべきだと書いた。  
  翻訳刊行後、たくさんの紹介文や書評が出て「今こそ読まれるべき本」と書いてくださった。「時代遅れの本」ではないはず、という私の長年の思いが確かめられた瞬間だった。池澤夏樹さんは「出版ダイジェスト」に、かつて自分もこの本を翻訳しようとした、と書いてくださった。


【読者からのメッセージ】
各出版社には、もっと復刊をしていただきますよう、お願いします。くだらん新刊を出すのでなく、昔出版されて今は手に入れられない名著がたくさんあるので、そちらを復刊して欲しいです。(24歳・男・学生)
図書館で借りて読み終わるような本ではないし、手元に置いておいて読み返したい本は、ぜひいつでも買えるようにしていただけるとありがたい。(女)
今回の候補リストを見て、これだけの書物が品切れなのに驚きました。中には古書価が値上がりしているものもあり、復刊はとてもうれしいです。(41歳・男・地方公務員)
今回の〈書物復権〉は文学・芸術分野がとても多く、復刊の実現がとても楽しみです。いずれも、同種類の書籍は極めて少ないので、復刊されればぜひ購入したいと思います。期待しています!(35歳・男)
本学図書館未所蔵図書をリクエストした。(男・大学図書館職員)
BookWebで欲しい本を検索した時に既に絶版になっていて入手できなかったものがありました。そのような任意の本を書物復権が利用できるととても便利と感じます。その都度の対応が可能になってくれると嬉しいですね。(37歳・男・会社員)
復刊してほしい本はたくさんあります。しかし、それをほしいと思うかどうかは、その時々の問題意識によります。できれば、各社ホームページに絶版書籍一覧を掲載され、このような形、あるいは購入申込のような形で希望者をつのり、ある程度数量がそろったところで復刊するというようなシステムがとれないかと思います。(53歳・男・教員)
最近の変動する社会情勢に鑑みて、過去の秀でた人達が記述した優れた著書を復活して今後の道しるべになって呉れたらと願っています。(男・58歳・医師)
書物復権の企画は大賛成です。人間、口当りの好いものばかり食らうと、節度を失いますからね。(69歳・男)
列記された題名を見ているだけでもわくわくします。今や書店に多くは期待しないまでも、せめて図書館では書物の文化を守って欲しいと思います。知的営みが、それを求める人の量だけで測られるようになれば文化は衰退するでしょう。まだまだ眠っている多くの書物が復権されんことを。(女)
余裕がなくてなかなか自分で買って読むというところまで行きませんが、興味をそそられる本がたくさんありました。図書館のお世話になると思いますが、復刊を楽しみにしています。(女)
数十年前に購入しそびれて以来、久しぶりに見た書物がいくつもありました。多くの人にとって、そういう書物はあるのではないでしょうか。(49歳・男・教員)
友人にこの本を読むことをかなり強烈に薦められていた一冊。「こういう本が何故品切れなのだ!」とこめかみに血管を浮き立たせて力説していたのを思い出します。そんな一冊が復刊リストに載っていて嬉しいです。(35歳・男)
締切が過ぎているのに失礼いたします。無効かもしれませんが、票に加算されることを期待しまして一応送らせていただきます。当方の知るかぎり、読みたいと思う方が多くいらっしゃるのに品切という本をリクエストします。(31歳・女・会社員)

東京国際ブックフェアのご案内
2009年7月9日(木)〜7月12日(日)まで、東京有明の東京ビッグサイトで開催される東京国際ブックフェアに、〈書物復権〉参加出版社が共同出展します。各出版社の刊行書が一同に勢揃い、ぜひ皆さまの7月の予定に組み込んでいただければ幸いです。  

詳細はhttp://www.bookfair.jp/でご覧ください。

書物復権参加出版社
■岩波書店
〒101-8002
千代田区一ツ橋2-5-5
TEL 03-5210-4112
■東京大学出版会
〒113-8654
文京区本郷7-3-1
TEL 03-3811-8814

■白水社
〒101-0052
千代田区神田小川町3-24
TEL 03-3291-7811
■法政大学出版局
〒102-0073
千代田区九段北3-2-7
TEL 03-5214-5540
■紀伊國屋書店
〒153-8504
目黒区下目黒3−7−10
TEL 03-6910-0519
■みすず書房
〒113-0033
文京区本郷5-32-21
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■勁草書房
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